イツァーク・パールマン(Vn) アンドレ・プレヴィン指揮ピッツバーグ交響楽団子ども部屋に溜まっている本をなんとかせよとの指令を受け、うすら寒い部屋で仕分けをした。ほこりをかぶったそれらのうち、半分くらいはワタシが昔に購入した本であるから文句はいえない。黄ばんだものは捨てるために紐で縛り、比較的きれいなものはブックオフへ持っていくために袋につめていった。
作業のなかで、記憶から消え去っていた本をちょくちょく発見する。コーホー氏と仲間たちによる「クラシックCDの名盤(演奏家篇)」も、そのなかのひとつ。
コーホー氏の趣向によるものと確信するが、ここに選ばれた演奏家は偏っている。指揮者では、セルやショルティ、クーべリックやマゼールがいないのに、朝比奈やインマゼールが顔を見せている。ソリストでは、ゼルキン(父のほう!)やグルダはいないのにも関わらず、ハイドシェックやルイサダが幅を利かせる。まあ、本は著者のものだから、好みを通すことは悪くないだろう。でも一方で、カラヤンは当選。ビッグネームだからだろう。趣味を押し通すと見せかけて迎合も忘れないところが、いやらしい。帯は「これぞ音楽の海の羅針盤」と威勢がいいが、そこまで言うには中途半端。こりゃ埋もれるわけだ。
目次をみて、即ブックオフ行きを決めたことは言うまでもない。
パールマンのシベリウスは懐かしい。LPで出たころに、図書館で借りて何度もきいたものだ。それまでシベリウスの協奏曲を、ほんの数種類しか聴いちゃいないくせに、これぞシベリウスの決定版、などと息巻いていたことを思い出す。
今聴いても、色褪せない。技術は文句ないし、なにより鳴りっぷりがいい。威勢のよさと柄の大きさは、極太の楷書。このヴァイオリニスト特有の、松脂くささを心ゆくまで味わうことができる。眼前で粉が飛び散る様が見えるようだ。幻覚だろうか。
そういうスタイルなので、いわゆる北欧の神秘性っぽいものは、あまり感じられない。むしろ、亜熱帯的熱さを帯びている、というほうが近いかも。ひたすら、パールマンの剛直なヴァイオリンを楽しむ演奏なのダ。
1979年2月、ピッツバーグ、ハインツ・ホールでの録音。
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