ラサール弦楽四重奏団、ステファン・リトウィンのピアノ、ジョナサン・ペギスの朗読で、シェーンベルクの「ナポレオンへの頌歌」を聴きました(1982年11-12月、ハンブルクでの録音)。
この曲は、シェーンベルクがアメリカ亡命後の1942年に作曲されました。「今度の戦争によって人類の中に目ざめた罪悪への苛立ちを無視してはならない」という思いで。
テクストは、バイロンによります。フランス革命のあと、自由・平等・博愛の思想をかかげて降臨したナポレオンがしだいに独裁者になってことを、バイロンはこの詩で激しく糾弾しています。まるでバートーヴェンみたいですね。でも、時代を超えて、訴えることの共通性がある。
音楽は、「ワルシャワの生き残り」を彷彿とさせます。その室内楽版ともいうべきか。あの曲ほどには苛烈ではないものの、ここには真摯な政治参加の表明が伺えます。いや、そんなことを差し置いても、これはシリアスな、純音楽として聴くに堪えうる。
ラサールの演奏は鋭角的であり精緻。ピアノはクッキリ明瞭。ペギスの朗読は、なめらかな英語が美しい。
パースのビッグムーン。
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