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僕のなかの壊れていない部分、カンゼル、”パリのアメリカ人"

2012.05.27 - ガーシュイン

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ガーシュイン曲集 エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス



白石一文の「僕のなかの壊れていない部分」を読む。
これは、大手出版社に務めるエリートサラリーマンが、女たちや自分に翻弄される様を描いた小説。
この本もまた、主人公の独白及びセリフの内容が濃い。
彼が自殺について愛人のひとりに語るくだり。自分を殺すことの典型を戦争にみている。

「戦争は自分の死を前提に成り立っている殺人だからね。自分がいつ殺されてもいいと思っていれば、他人を殺すことに対する罪悪感なんて微塵もなくなるさ」。

こういう戦争否定の考えもあるのだな。








吉田秀和が亡くなった。死ぬまぎわまで、元気に活動していたのはさすが、こういうのを大往生というのだろう。
思い入れがあるから、彼については今度改めて書いてみたい。


さて、音楽はカンゼルが指揮をする「パリのアメリカ人」を聴く。
この曲で好きな部分は、出だしのほうで登場するヴァイオリン・ソロだ。いろいろな演奏を聴いてきたが、ニヒルというかアンニュイというか、そんな感じで奏されている演奏が多いと思う。楽譜にそういった指示があるのかどうかはあずかり知らないが。
歴史深い大都会に放り出されて途方に暮れているさまが、この短い時間に集約されているように感じるのだ。
この演奏もそう。けだるい感じがなんとも言えない。今日の埼玉のような、うすら暑い日曜の午後のようにもまた感じられる。

といいつつ、他の部分は洗練された演奏と言える。適度な厚みと華やかさもある。題名を知らずに聴いたならば、パリというよりはニューヨークの、高層ビルの光が煌びやかな大都会を想起するのじゃないだろうか。
オケを知っているからかな。

シンシナティ・ポップスは、シンシナティ響を母体とする臨時オケだと思う(指揮がカンゼルだから)。普通にうまい。という言い方は変か。うまい。
テラークの録音は相変わらずすばらしい。少々メタリックだけど、コンサート・ホールで聴くのに近い音がする。


1981年1月、シンシナティ、音楽ホールでの録音。

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