村上春樹が翻訳・編集した「恋しくて」を読む。
マイリー・メロイの「愛し合う二人に代わって」は幼馴染のふたりが代理結婚を重ねながら、お互い紆余曲折を経て人生に立ち向かう話。ど真ん中ストレートの恋愛小説。これは、好きだ。
デヴィッド・クレーンズの「テレサ」は、少年の片思いの話。短いが甘酸っぱい味が懐かしい。
トバイアス・ウルフ 「二人の少年と、一人の少女」は一人の女をめぐる三角関係の話。アメリカ映画によくありそうなストーリー。
ぺーター・シュタム 「甘い夢を」は、どこにでもありそうな二人のカップルの話。近いうちに別れるのじゃないかないかと予測させる。
ローレン・グロフ 「L・デバードとアリエット」は、妊娠させた娘の両親に去勢される気の毒な男の話。「アベラールとエロイーズ」がヒントになっているに違いない。
リュドミラ・ぺトルシェフスカヤ 「薄暗い運命」は、妻子ある男に恋する中年女の話。いささか薄暗い掌握小説。
アリス・マンロー 「ジャック・ランダ・ホテル」は、新しい女と駆け落ちした男を追って、カナダからオーストラリアに移住して、他人になりすまして男に接触を図る女の話。怖い。
ジム・シェパード 「恋と水素」は、飛行船「ヒンデンブルク」の乗員であるゲイのカップルの話。あまり興味なし。
リチャード・フォード 「モントリオールの恋人」は、金持ちの弁護士が不倫相手の夫に絡まれる話。まあ、どうでもよい。
村上の
「恋するザムザ」は、以前に書いたとおり。
ペルノーのチェロでオッフェンバックのチェロ協奏曲「軍隊風」を聴く。
オペラ作曲家で知られるオッフェンバックは、実はチェロの名手であったらしい。そんな彼が作ったコンチェルトとはいかに。40分を超える大曲である。
これは、チェロのパガニーニである。
技巧をひけらかしまくっている。赤面するほど。
重音奏法、フラジオレット奏法、超高音域でのアルペッジオ・・・。
そして、楽想も明るい。一直線にノーテンキである。陰影というものがない。それはもう徹底している。潔くて、気持ちがいいくらいだ。
チェロは基本的に、オペレッタのアリアのような役回り。低い声から高い声まで、縦横無尽に走り回る。
オケは伴奏に徹している。色彩が鮮やかで楽しい。
というわけで、このジャンルで同様の規模を持つドヴォルザークのそれとは内容の深さにおいて比較するべくもないが、気楽に愉しむにはこれを選択するのも一興かもしれない。
ただ、何度も繰り返し聴くような音楽ではないかな。
ジェローム・ペルノー(チェロ)
マルク・ミンコフスキ指揮 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
2006年1月、グルノーブルでの録音。
エバーラスティングの絨毯。
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