ハンス・フォンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン他の演奏で、R・シュトラウスの「ばらの騎士」を聴きました(1985年2月、ドレスデン国立歌劇場でのライヴ録音)。
第二次世界大戦で瓦礫となったオペラハウスは、1985年に再建されました。その復興記念の演目になったのは、ウェーバーの「魔弾の射手」と、この「ばらの騎士」。
このCDでは、そのライヴの生々しい感興を楽しむことができます。東ドイツが威信をかけた演奏と言えるかもしれません。
全体を通して、とてもバランスのいい演奏。録音はいくぶんデッドなものの、甘くかぐわしい匂いが立ちのぼるよう。
まず、アダムのオックスが素晴らしい。とても好きな歌手であり、期待を裏切りません。たっぷりと豊満で厚みがありつつ、トーンが明るい。彼のワーグナーもそうですけれど、バスバリトンとしてこんなに晴れやかな声をもつ歌手は少ないのじゃないかと思います。
それから、ステイルカルのゾフィー。なんてコケティッシュなのでしょう。中音部から高音に伸びるところは、ポップやボニーを思わせる。それでいて、知的な佇まいがある。初めて聴く歌手ですが、素晴らしいと感じました。
マルシャリンとオクタヴィアンも気品があっていい。硬質な声が、曲そのものに馴染んでいる。
フォンクの指揮はライヴのせいもあり、臨場感たっぷり。堅実であるだけでなく、艶っぽさもある。ドレスデンは肌理の細かい弦がこよなく美しい。
「ばらの騎士」を語るときに、落とせないディスクだと思います。
元帥夫人:アナ・プサール=ヨリッチ(ソプラノ)
オックス男爵:テオ・アダム(バス=バリトン)
オクタヴィアン:ウーテ・ヴァルター(メゾ・ソプラノ)
ゾフィー:マルゴット・ステイルカル(ソプラノ)
ファニナル:ロルフ・ハウンシュタイン(バリトン)、他
ドレスデン国立歌劇場合唱団(合唱指揮:ハンス・ディーター・プフリューガー)
パースのビッグムーン。
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