河野真有美さんのピアノ・歌手たちによる「COFFEE TIME CONCERT」に足を運びました(2017年12月3日、ザ・ステーションスタジオ幡ヶ谷にて)
バッハの「コーヒー・カンタータ」は副題はなんとなくとっつきやすいですが、音楽そのものは淡々としていて、歌詞の内容を知らなければ器楽曲のような佇まいがあります。だからこそ、演奏者の力量が顕在化する。難しい曲だと思います。
途中にセリフを挟みながらの演奏は明快でした。歌手はそれぞれ持ち味を発揮していたように伺います。
ソプラノは柔らかで華があり、テノールは細く硬質な声で真っ直ぐな歌を奏でました。バリトンはふくよか。たっぷりとした声量の持ち主。
ヘンデルのメサイアから「我が民を慰めよ」、ジュリオ・チェーザレから「貴方をお慕いしております」、「嵐に難破した船は」
後者は、ソプラノの厚みのあるコロラトゥーラが素敵だった!
ロッシーニのスターバトマーテルからは「嘆き憂い悲しめる」
モーツァルトのフィガロの結婚から「素晴らしきかな、ご主人殿下」、「準備はすべて整った」
ヴェルディのトラヴィアータから「乾杯の歌」
日本にピアノ伴奏のスペシャリストは、古くは小林道夫を始め多数存在するなかで、オペレッタからヴェルディ、モーツァルト、そしてヘンデルのオラトリオ、バッハのカンタータまでをひとつのコンサートで見事に弾き抜くピアニストを、寡聞にも多くは知りません。
今日のピアノ(YAMAHA)は、やや硬質な音質だと感じましたが、優しいタッチで奏でられるソノリティからは芳香が匂い立つようでした。それは温かく胸に浸透しました。
ピアノ・ソロは1曲、ショパンの遺作のノクターン。人生に疲れていたのであろうショパンの哀感が切々と歌われていて、これもいいピアノでした。
ソプラノ 武田千宜
テノール 野口唯一
バリトン 伊東達也
ピアノ 河野真有美
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