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クナッパーツブッシュのR・シュトラウス「アルプス交響曲」

2009.09.26 - R・シュトラウス
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シュトラウス「アルプス交響曲」「死と変容」 クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル


内田樹の文庫本が店頭に出ると大抵買っている。いま一番買いの評論家だ。普段はあたりまえに思って素通りしている事柄について、わかりやすく解説してくれる。
今回読んだのは「こんな日本でよかったね」。
私がカメの歩みの如く読み進めている「方法序説」からの引用がある箇所が面白い。
「オレって、誰なんだろう」といったようなテーマに取り付かれると、終わりなき考えに収拾がつかなくなってしまう。そんなときは、「そんなこと考えても埒があかないから、もういいや、ラーメンでも食おう」といった現実的な対処が必要になるわけだ。そこでデカルトが登場。長いが引用する。

「自分の住む家の建て直しをはじめるに先だっては、それをこわしたり、建築材料や建築家の手配をしたり自分で建築術を学んだり、そのうえもう注意深く設計図が引いてあったりする、というだけでは十分ではなく、建築にかかっている間も不自由なく住めるほかの家を用意しなければならないのと同様に、理性が私に対して判断において非決定であれと命ずる間も、私の行動においては非決定の状態にとどまるようなことをなくすため、そしてすでにそのときからやはりできるかぎり幸福に生きうるために、私は暫定的にある道徳の規則を自分のために定めた。」

これが内田の言うデカルト・ラーメン説。
ただ、この考えを取るとなるとラーメンのハードルはけっこう高い。私などはラーメンもろくに食えない有様だ。


アルプスの山とはどういうものなのだろう。マッターホルンの写真くらいしか見たことがないが、フツーのヒトが登ることができるものなのだろうか。
十数年前に富士山に登ったことがある。五合目まで自動車で登り、そこから徒歩で頂上を目指した。最初はハイキング気分で歩いていたが、九合目を越えるあたりから急にきつくなった。空気が薄くなり、うまく呼吸ができないのである。
あと少しで頂上というところでは、十歩進んでは空気補給のために休むといったペースになり、いつ果てるともしれない登山であった。やっと頂上に着いたときは喜びよりもホッとしたものだった。
半分も車で行ったのにこのザマなのだから、最初から徒歩で行くなどできるわけがないと思った。いまでは五合目からでもゼッタイ無理。

このクナッパーツブッシュのアルプス登りは、自動車なんかを使わない自力の歩みだ。弦にしても金管にしても、ゴツゴツザラザラした手触りでそれはいかにも手作りといった感じの風情がある。けっして流暢な語り口ではないものの、ひとことひとことに無骨な味わいがあるので耳を傾けてしまう。
ウイーン・フィルは技術的にはうまいといったイメージはないが、この演奏はライヴにも関わらず瑕疵は少ない。
この曲をいままであまり好きではなかった。それぞれの曲につけられた大仰な名称も。だいたいアルプス登山中に嵐なんかきたら死ぬぜ。
この演奏は何度か聴いてもまだ飽きない。

1952年4月20日、ウイーン音友協会大ホールでの録音。

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Comment

無題 - neoros2019

くー!?
ジャケット、かっこいいですね
これは未聴です
2009.09.26 Sat 23:50 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントありがとうございます。

クナの指揮姿、サスガに堂に入っていますね。
「アルプス交響曲」、あまり好きな曲ではありませんが、この演奏だと面白く聴くことができました。
ウイーン・フィルの古き時代の香りも濃厚です。
2009.09.27 17:33

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

内田樹さんの本、面白そうですね〜
アマゾンで検索して、一冊読んでみようかと思っています。どれがお薦めでしょうか?

デカルトの説、「仮の道徳」として有名なものではないでしょうか?取りあえずはこれで行こうとと考えて、それから普遍的な道徳に至るということになるのでしょうが、デカルトはそうしたものを提示はしていなかったのではないでしょうか? もう忘れてきていますが〜。

富士登山、高齢者によるトラッキング、今、ものすごく人気があるそうですね〜。夏山であっても、怖いところも多いみたいですね〜。富士山も同じかもしれませんが〜。

クナのこの演奏、私も興味があったのですが、まだ聴いてはおりません。クナの最近のLPからの復刻盤の音がものすごく良くなっていて驚いています〜。
いまだに、クナの演奏は色々と出てきますね、それだけファンが多いからかもしれませんね〜、それに、こういう音楽作りをする音楽家がいなくなってしまっているからかもしれませんね〜。

ミ(`w´彡)
2009.09.27 Sun 10:28 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

内田樹は「下流志向」と「こんな日本でよかったら」がお薦めです。どちらも最近に買ったもので、文庫化されています。

デカルトのラーメン説は「仮の道徳」というのですか。意図としてはたしかに仮ですね。しかしわたしにとっては「仮」にたどり着くのもなかなかやっかいです。「仮」にたどり着けぬまま逝ってしまうかも。
「方法序説」、今年中にはなんとか読み終えたいと思います。

富士に行くまでは観光旅行みたいなものだろうと高をくくっていましたが、実際に登ってみるととんでもない目にあいました。山は怖いですネ。

クナの「アルプス」いい演奏です。音質もじゅうぶん鑑賞に耐えます。ウイーン・フィルならではの音を堪能しました。
2009.09.27 17:42
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