この指揮者の経歴はいささか変わっている。
ベルリン芸術大学コントラバス科を卒業後、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団を経てNHK響に入団。桐朋学園大学講師、国立音楽大学で教鞭をとるかたわら、多摩美術大学に入学して絵画を学び、数々の美術コンクールで入賞している。
シューマン 交響曲1番「春」
シューマン 交響曲3番「ライン」
この多才な男は指揮棒を持たず、最低限の動きで分かりやすく簡潔な指示を出していた。
「春」は全体的に速めのテンポ。てらいのない流れが心地よく、あっという間の30分だった。
ラストはホルンとフルートが輝きを放ち、高揚して締めくくった。
「ライン」は「春」よりも難易度が高いと思うが、安定感のあるバイオリンを軸に、生き生きとした音楽を聴かせた。
ことに2楽章の、しっとりとした優しい風のような響きは、アマオケの水準を超えるものだったと思う。
このオケとの出会いは、埼玉県に住んでいた頃。所沢のミューズでブラームスの二重協奏曲を聴いて以来。
今時はアマオケでも500円から2000円くらいのチケットが必要だが、この東京ルフトは無料で事前の申し込みも不要。
それでいて高い質の演奏を聴かせてくれる。
本当はあなたにも教えたくないのだけど、私がどうこうしなくとも、口コミで徐々にブレイクするに違いない。
2014年2月11日、東京、杉並公会堂にて。
海辺。
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