リスト 「巡礼の年第3巻」から「エステ荘の噴水」 クラウディオ・アラウ(Pf)山崎将志の「残念な人の仕事の習慣」を読む。
腹の立つメールが来たとしよう。あなたならどうするか。反論のメールを返すか、黙殺するか。
「トム・ソーヤーの冒険」で知られるマーク・トウェインのところには、読者からの手紙がたくさんきたという。なかには、腹立だしいものや納得のいかない批評がある。
彼はそれにいちいち反論していたが、それによるトラブルは一度もなかったのである。それは何故か?
夫人がポストに投函せず、捨てていたからである。
かように人間は、自分が納得しさえすればいいのである、というわけだ。
孫引きであるが、ここのところが一番印象に残った。
残暑の厳しい日に聴く音楽は、「エステ荘の噴水」がふさわしい。
キーンと冷えた部屋でまったりと身を任せる快感。まだ夏だなァ。
エステ荘とは、晩年に僧職になったリストが住んだ家。巡礼の年第3巻は、ほとんどがこの家で書かれたもので、「エステ荘の噴水」はその4曲目にあたる。ラヴェルの「水の戯れ」に影響を与えたことでも知られているようだ。
アラウのピアノは音の美しさで聴かせる。ことに、高音がいい。澄み切っていて適度な潤いがある。涼しげであるなかから、淡い幻想味が立ちのぼる。
遠きエステ荘に思いを馳せずにはいられない。
1969年3月の録音。
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