今年の初聴きは、ラザール・ベルマンのピアノで、リストの「巡礼の年、第3年」(1977年5月、ミュンヘン、ヘラクレス・ザールでの録音)。
この曲集の多くは、1877年あたりに作曲されています。ときにリストは60代後半。不協和音がときおり顔を見せ、内省的で神秘的な曲が多いことが特徴と言えます。有名な「エステ荘の噴水」はそういった要素も強いし、独特なアルペジオを用いていることから、ドビュッシーに大きな衝撃を与えたと云われています。
1.夕べの鐘、守護天使への祈り
2.エステ荘の糸杉にI:哀歌
3.エステ荘の糸杉にII:哀歌
4.エステ荘の噴水
5.ものみな涙あり/ハンガリー風に
6.葬送行進曲
7.心を高めよ
ベルマンのピアノは、相変わらず透明感を湛えており、青空のような広がりを感じます。トルクに余裕があって、スケールが大きい。
「夕べの鐘」は渋い曲ですが、静寂からそっと立ちのぼるピアニシモの響きが幻想的で痺れます。
「哀歌」は冬仕様の分厚いカーテンのよう。色彩はシックで簡素でありつつ、熱い血を感じさせます。
「エステ荘の噴水」のアルペジオは、粉雪のように軽やかで、かつ質感があります。最弱音がじつに繊細で味がいい。
それとは対照的に「ものみな涙あり」、「葬送行進曲」はいかめしい。重低音に濁りなし。
「心を高めよ」は曲名通り、古跡のような荘厳さに加え、高揚感があります。
パースのビッグムーン。
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