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アンセルメのラヴェル「スペインの時」

2009.04.25 - ラヴェル

ravel

ラヴェル「スペインの時」 アンセルメ指揮スイス・ロマンド管


五木寛之の「人間の関係」を読む。
今世紀に入ってから、五木は小説よりもエッセイのほうに比重を置いているようだ。ここ数年でけっこうな数の本が出ている。
ジンセイとは何かというような、わりと重いテーマを扱っているけれども、語り口が易しいのでスラスラと読むことができる。「大河の一滴」あたりから、このような作風に変わっていったのかなと思っている。
しかし、最近出版されたものを何冊か読んでみると、どれも似たような話題に感じる。「大河の一滴」も「人生の目的」も今回読んだ「人間の関係」も、同じようなテーマを扱っているので、それぞれ何を書いてあったかを個別に思い出すのはかなり難しい。はっきり言ってしまえば、どれかひとつを読めば彼の考えはおおむねわかるのだろうと思う。
そうはいっても、新刊が発売されると、つい手にとってしまう。ぱらぱらとめくってみると、どうもやはり目新しいところはなさそう。でも買ってしまう。
共感できるところが多いからか、何度も確認したくなるのだろう。扱うテーマは同じながら、表情や温度が少しずつ変化してゆく変奏曲を思わせる。
またか、と思いつつ、それを楽しむのが私の五木本の読み方。


アンセルメとスイス・ロマンドのラヴェル。冒頭の時計の音は、ジュネーブの機械式であろうか。
どことなくせつなく、シュールな響きだ。新しい気もするし、古風な感じもする。その後に登場するテノールの、鼻にかかった発音がなんとも言えずおフランスである。 昔に観た、ルネ・クレールの「巴里祭」を彷彿させるものがある(モチロン封切で観たわけではない)。
石畳に整然と並ぶ古ぼけた石の家、ぼんやりと輝く街灯。この映画の映像が、自分にとってのパリだった。それを観て十数年してから、実際のパリを見たのだけど、その印象は七十年ほど前に作られた映画のイメージほぼそのままだったのだ。
モノラルの録音が、風情に輪をかけている。映像でいえばクレールの味わい深いモノクロの世界だ。

舞台は18世紀のスペイン。浮気性の時計屋の女房を中心に繰り広げられるドタバタ劇。
ダンコの、鼻にかかったつぶやきのような歌がいい。歌というよりも、語りに近い。艶っぽい声を聴いていると眠たくなってくる。いい意味で。
オケは雰囲気満点。ファゴットやトロンボーンのユーモラスな嘆き節がなんともいえない。適度に乾いていて、目の前で浮かび上がるような軽やかさがある。
「マ・メール・ロア」のメロディーが断片的に顔を出す。メルヘンの香りが濃厚。

シュザンヌ・ダンコ(ソプラノ)
ポール・デレーヌ(テノール)
ミシェル・ハメル(テノール)
ハインツ・レーファス(バリトン)
アンドレ・ヴェッセーレ(バス)
スイス・ロマンド管弦楽団
エルネスト・アンセルメ(指揮)

1953年5月、ジュネーヴでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

私も同じ事が書いてあると思いながら、養老孟司さんの新刊を買ってしまいます、爆〜。
私は仕事先の人間関係が、苦痛で苦痛でなりません、爆〜。大声で人の病気のことを噂しあったりしています、普通の職場でもそうなんでしょうか? 人の不幸は蜜の味と言いますが、私には堪えられません、爆〜。たまに「喧しい」と怒鳴ってしまい、顰蹙を買っています、爆〜。

アンセルメのラヴェル、出てきましたね〜。CDは買っていたのですが、初めて聴いています、爆〜。
不思議な音楽ですね〜。スイス・ロマンドには、アンリ・エレールというバソン(フランス式バスーン)の名手がおられたんですよ。私は深く尊敬しています。
ダンコさんは、クライバーの「フィガロ」でスザンヌを歌っておられたような〜。
フランス語の発音と楽器の音は似てくるのではないかと思ったりもしています。
フランス系の奏者がドイツのオケストラに入っています。管楽器はフランスが圧倒的に上手いですので〜。でも、フランスではフランス式の楽器が使われなくなってきています。残念なことですね〜。

アンセルメのCDを集めているのは、フランス系の音を記憶したいからかもしれません。私は実は、ゲルマニストなんですが、爆〜。

ミ(`w´彡)
2009.04.26 Sun 07:29 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

五木も多いですが、養老さんもたくさんの本を出していますね。ああいったものを大量に出すヒトの本は、どうしても似通った内容になるようです。最近は、森永卓郎の本を2冊続けて読みましたが、半分くらいは同じ内容でした。
職場の人間関係はやっかいですよね。私も神経を使います。なんでこんなことに気を使わなければならないのか、ジンセイは実にメンドウです。

アンリ・エレールというバソンの奏者、私は名前を知りませんでしたが、この「スペインの時」ではバスーンが部分的に活躍します。なんともいい音ですよ。こうしたものは、最近の録音では聴くことができませんね。
フランス語の発音と楽器の相似、なんとなくわかるような気がします。今はドイツが主流なのでしょうか、わりと画一化しているように聴こえます。このフランスの音、いいものです。
2009.04.26 21:48
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