リパッティ バッハ、モーツァルト作品集母方の祖母が一昨日亡くなった。享年95歳。直接の死因は心筋梗塞だが、前日まで元気だったらしいのでほとんどポックリ、老衰といっていいのだろう。
昨日、顔を見に実家に行ってみたものの、親族だけでの葬儀なので、葬儀屋と簡単な打ち合わせを終えると手伝うこともあまりなく、みんな集まったもののわりと手持ち無沙汰なものだ。
葬儀の忙しさは親族の悲しみを紛らわすためというけれど、逆にいえば、大往生だから簡単に済ませられるということもあるかも知れない。
小林秀雄は弦楽五重奏を聴いて「モオツァルトのかなしみは疾走する」といったけれど、その言葉はイ短調ソナタにも当てはまる気がする。ことに両端楽章の、駆け抜ける速さ。言葉にできない悲しみを振り切ろうとしているのだけれど、振り切ることのできないもどかしさ。
リパッティのピアノは、端正で落ち着きがあり、上品だ。決して感情的にならない抑えた弾きぶりだから、むしろ悲劇の色は濃い。
痩せていてモコモコした録音なのが残念だけど、残してくれただけでありがたいというものだろう。
1950年7月、ジュネーヴでの録音。
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