川上弘美の「神様」を読む。
これは、女性がくまと河原へ遊びに行く話。
このくまは、ヒグマなのか月の輪なのかマレーシアなのかよくわからない。ただ大きいことがわかっている。
彼は図体に似合わず理屈っぽく、饒舌。意外に頑強ではない。けれど優しい。
主人公が河原で昼寝をしている間に、くまが採った魚で醸造される干物がじつにうまそう。くまと別れたあとに彼女はこの干物でご飯を食べるのだなあと思うと、羨ましくなる。
たいした話ではないのに、ずっと心に残りそうなこれは短編。
ショルティの指揮でマーラーの交響曲3番を聴く。
これはシカゴ響の機能性をいかんなく発揮した演奏。ことにトランペットを始めとした金管群と艶やかな弦楽器群がよい。
全体を通してショルティらしいメリハリのついたものなので、大きな聴きどころは1楽章ということになる。どの楽器もじつに切れ味がよく、さわやか。湿度が少ない、カラッとした陽気。オケのメンバーがクールに技を競い合う。展開部でヴァイオリン・ソロが登場するくだりは感動的。再現部で冒頭のファンファーレが出てくるところは、冒頭よりさらに激しいので、ハッとさせられる。ラストの金管楽器群の細やかな表情と打楽器のパンチ力は、このオケならでは。
あと終楽章もいい。弦楽器がなんと輝かしいことか。そして細やかな表情づけが見事。痒いところにバッチリ手が届くのである。ひっそりとポルタメントをきかせるところなんか、泣かせる。気合いが入っていたのだろう、ショルティの唸り声もときどき聴こえる。
ショルティ入魂のマーラーである。
ヘルガ・デルネシュ(ソプラノ)
シカゴ交響楽団、シカゴ交響女声合唱団(指揮:ジェームズ・ウィンフィールド)
グレン・エリン少年合唱団(指揮:ドリーン・ラオ)
1982年9月、シカゴ、オーケストラ・ホールでの録音。
パースの美しい朝焼け
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