マゼール指揮フランス国立管弦楽団の演奏で、マーラーの交響曲1番「巨人」を聴く(1979年3月、パリでの録音)。
録音年代は、マゼールがクリーヴランド管弦楽団の音楽監督であった時期にあたる。
このコンビはベートーヴェンにしてもブラームスにしてもベルリオーズにしても、あたかも盆栽のようにまとまった小宇宙みたいというか、角の立ったポキポキした独特の音づくりが目立っていたし、それが好きだった。
でも、このマーラーにおいては、それが感じられない。どちらかと云えば、曇り空のようなくすんだような音色でもって、もったりとしたふくらみのある音楽を作っている。
オーケストラが違うからなのか、マーラーに対するアプローチなのか。後年にウイーン・フィルとやったものに肌合いが近いから、後者なのかもしれない。
1楽章はいたって中庸。マゼールの音楽に時折あらわれるケレン味はない。
2楽章もとくに変化はない。パリ管弦楽団に比べたら、この国立管弦楽団は比較的最近(マルティノンあたり)まで、おフランスの香りがあったと記憶するが、この演奏でのホルンはいたって普通。
3楽章はティンパニの音がいい。決然としていて、芯がある。気のせいか、皮の匂いもするような。このティンパニのリズムで繰り広げられる各楽器たちの葬送行進曲を、ベートーヴェンの「第九」のパロディだと喝破したのは吉田秀和だが、それを知ってこの演奏を聴くと、そうなのかなと納得しそうになる。
終楽章はじゅうぶんに迫力がある。軋む弦楽器にチューバの咆哮、そしてグランカッサの楔。ファゴットとクラリネットの音色に酔う。最後は豪壮に幕を閉じる。
確か、マゼールはクリーヴランドとは正規にマーラーを遺していない。どんなものになったか、聴いてみたかったものだ。
駐車場。
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