ブレンデルのピアノ、ラトル指揮ウイーン・フィルの演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲1番を聴く(1997年12月、ウイーン、ムジークフェラインザールでの録音)。
これは軽やかで爽快な演奏。
まるで短く刈り込んだばかりの青々とした芝生のよう。
ラトルの指揮は、少しピリオド奏法を意識したものと思われ、音を短く区切って、サクサクと進む。演奏時間よりも、速いテンポに感じる。ヴァイオリンも対抗配置。ただ、モダン楽器でありヴィブラート奏法なので、豊満さはある。
ブレンデルの弾き方もそれに平仄を合わせたかのようで、軽くてデリケート。70年代にハイティンクと演奏したものとは、趣が異なる。
1楽章の9:00あたりのところ、静かな場面からピアノが急下降するところで、一拍おいて弦が入るところは初めて聴いた。スコアはどうなっているのだろう。いままで聴いたものももしかしたら弦が鳴っていたのかもしれないが、とにかく、この演奏ではそれが明瞭に聴こえる。
長いカデンツァでは、ブレンデルがたっぷりと潤いのあるピアノを聴かせてくれる。
2楽章はブレンデルの厚みのあるピアノが聴きどころ。ここではラトルはひたすら引き立て役に回る。
3楽章は速い。出だしのピアノのフレーズは、いつも聴くものと異なる。なにがどう違うのか説明が難しいのだけれど、リズムが微妙に揺れていて、なにか含みのあるような。ブレンデルのことだから、考えがあってのことだろう。
ラストは勢いよく締めくくられる。
駐車場。
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