伊集院静の「無頼のススメ」を読む。
「運や流れを引き寄せるのに必要な心構えを挙げてみよう。うつむかない。後退しない。前のほうへ行く。それからウロウロする」
上記の記述が印象に残ったくらい。読んだそばから忘れるという類の本であり、内容は薄い。
アレクサンダー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲7番「ラズモフスキー1番」を聴く(1997年3月、カリフォルニア、ベルヴェデーレでの録音)。
アレクサンダー四重奏団によるベートーヴェンも中期。このあたりになると、技巧的な面も情緒的な味わいも初期に比べるとぐっと深くなってくる。なので、奏者の技量が試される音楽であろうと思われる。
演奏はひたむきともいえるほど、まっすぐ。変化球はほとんど用いない。葉っぱからつゆが零れおちそうなくらいに瑞々しい。勢い重視だが、アンサンブルに乱れはない。この曲はチェロが活躍するが、ウィルソンは安定している。
2楽章のアレグレットはチェロによる、同じ音符の連打で始まる。初演時に居合わせた聴衆が冗談だと思ったという逸話があるが、それもうなづける。でも今となっては、これがいたって普通だと思えるから、これはアリなのである。新しささえも感じないほど自然。
3楽章のアダージョも聴きどころ。嘆きとも悲観ともしれないシリアスなヴァイオリンの叫びに、ベートーヴェンはなにをあらわそうとしたのだろう。アレクサンダーはこのヘ短調の曲に真摯に向き合い、悲しくも美しく弾きあげている。
そして一転、チェロの快活なメロディーで4楽章になだれ込む。前の楽章の悲哀を吹き飛ばすかのような明るさがあり、気持ちがいい。
フレデリック・リフシッツ(ヴァイオリン)
ゲ・ファン・ヤン(ヴァイオリン)
ポール・ヤーブロウ(ヴィオラ)
サンディ・ウィルソン(チェロ)
駐車場。
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