今朝の「天声人語」。冒頭を引用する。
『台所にアリが出て困る。どうしたらいいでしょうと女性に聞かれて、アリ研究の権威が答えたそうだ。「足を下ろすときは慎重に」。』
この話、たまらなく好きだ。
カザドシュのピアノで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を聴く。
カザドシュの、粒立ちのいいピアノはここでも健在で、軽やかな足取りのベートーヴェンが展開される。
それはもちろんいいのだが、この演奏の全体をリードしているのは、べイヌムではないのかという気がする。とにかく、オケのいきがいい。今生まれたばかりのような、ピチピチでツルツルの管弦楽である。
その魅力は1楽章からじゅうぶんに発揮されているが、ことにいいのは終楽章だ。
年季の入った大木の皮のように味わい深い弦の響きが流れる上方で、春の土筆のように瑞々しい木管群が短いパッセージを奏でるところあたり、胸を躍らせないわけにはいかない。コンセルトヘボウの力量の高さもさることながら、指揮者の見識の高さを感じる。どこをとっても、ある種の閃きを感じる演奏なのだ。
カザドシュに話を戻すと、こちらも普通以上にいい。両端楽章のカデンツァは今までに聴いたことのないものだから、彼のオリジナルなのかも知れない。
全体を通して、ピアノもオケも創意工夫に満ちた演奏となっている。
ロベール・カザドシュ(ピアノ)
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
1959年3月、アムステルダムでの録音。
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