クリヴィヌの指揮でR・コルサコフ「シェエラザード」を聴く。
ときに爆演を繰り広げるこの指揮者だが、ここではまっとうで比較的おとなしい。全部直球勝負のオーソドックス演奏である。
激しい場面ではパワフルに、静かなところではしっとりと、表情を巧みに描き分けている。
フィルハーモニア管は好調。合奏のマッシヴな重みとソロの巧みさ、そして煌びやかな色彩感。さすがの腕前。
そしてカントロフのヴァイオリン。なんとも玄妙で、抒情味に溢れたヴァイオリン。
この曲であえてコンマス以外のヴァイオリニストを持ってくる意図が聴く前はわからなかったが、聴いて納得である。すばらしい存在感。格が違う。
これは、「シェエラザード」の録音史上に残るソロであろう。
エマニュエル・クリヴィヌ指揮
フィルハーモニア管弦楽団
ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン)
1989年4月、ロンドン、オール・セインツ・トゥーティング教会での録音。
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