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最後の喫煙者、スメタナ四重奏団、ベートーヴェン

2011.03.13 - ベートーヴェン
   
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番


筒井康隆の「最後の喫煙者」を読む。舞台は近未来。禁煙運動がだんだんと広まり、やがて弾圧となって、とうとう最後の喫煙者になった追い詰められた主人公のもがきを描く。
「殉死」した煙草仲間のセリフ。
「わたしたちはあの悲惨な戦中、戦後を体験してきているが、世の中が豊かになればなるほど、法律や規制がふえ、差別がふえ、不自由になっていく。これはなぜですか」
この小説が発表されたのは1987年。今、まさに同じ状況になりつつある。
こうした健康モノに限らず、ファシズムは気づきにくいところに潜んでいるから要注意だ。


ベートーヴェンが最後に書いた四重奏曲は、1826年に完成し、死後の1828年3月に行われている。
自筆の楽譜の終楽章には「そうなければならぬか?」「そうなければならぬ」と書き添えられている。これには諸説あるようだけれど、そのなかでは家政婦と給料についての問答である、との説を取りたい。生活感がにじみ出ているし、それをあえて楽譜にメモるというテキトーさがいいではないか。アノ最後の四重奏曲をかきつつ、金の勘定に頭を悩ませていたなんて、なんだかステキだと思う。
スメタナ四重奏団の演奏は、快活でおおらかさなもの。なにかを突き抜けたような明るさに輝いている。ズスケとかラサールのような、アリの這い出る隙もないような厳格な合奏でもって重厚に迫る演奏も、もちろん素晴らしいけれども、今の気分にはスメタナの適度にゆるくてあたたかい演奏のほうがしっくりくる。

イルジー・ノヴァーク、リュボミール・コステツキー(Vn)
ミラン・シュカンパ(Va)
アントニーン・コホウト(Vc)


1968年10-11月、プラハ、ドモヴィナ・スタジオでの録音。
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Comment

無題 - neoros2019

先日、急性肺がん?になったのではないかとみまがうほど帰宅したら胸に鈍痛が走りました
なんせクルマに乗っている間中、吸いまくっていましたから
著:安藤治「たばことクラシック音楽」という書籍があるそうです
ベートーヴェンも嗅ぎ煙草やパイプをたしなんだという記述があるそうです
16番はベートーヴェン最期の作品ということで
私も昔から襟を正して聴く曲ですね
2011.03.15 Tue 18:37 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

どうも最近少し本数が増えました。仕事、このたびの地震のストレスのせいではないかと勘ぐっています。
値上げして減るかと思いましたが、悲しいことに慣れてしまいました。
「たばことクラシック音楽」、面白そうですね。
そういえば、ショルティの「神々の黄昏」の録音風景に、F・ディースカウがスパスパ吸っているシーンがあります。あれは痛快です。
2011.03.16 22:54

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

お久しぶりです、なかなかコメントができずにいました〜。ご無事のようですが、何かと不便がおありかもしれませんね〜。未曾有の災害の中、まさに Muss es sein?と問いかけなければならない事態かもしれませんね〜。

このブログを見てからアマゾンに筒井さんの本を注文しました。普段は朝に注文すれば夕方には届くのですが、震災の影響か、2日かかりました。
「静かなファシズム」が一番怖いですね、「喫煙禁止」知事、「コミック禁止」知事、色々な方が出てきますね〜、しかもここぞとばかりにコッソリと法律を改正したり〜。怖いですね〜;;

スメタナのベトベン、久しく聴いていません。
久しぶりに聴いてみようかと思います。

くれぐれもご自愛ください
▼・。・▼
2011.03.18 Fri 07:14 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

こちらこそ、ごぶさたしております。

計画停電のグループに入っているせいか、電車がまともに動いていないので通勤に苦労しています。そのほかは、まあ普段通りにやっていますが、どこの店もうす暗くて、少々気が滅入ってしまいますヨ。

筒井さんの本、面白いでしょう。
知事は権限を発揮しやすいのか、一部の地方はひどいことになっていますね。ファシスト知事のおかげで、ワタシは神奈川へは足を踏み入れないことにしています。
2011.03.19 17:35

無題 - アルトゥール

吉田さん
お久しぶりです。
スメタナ四重奏団といえば、70年代から80年代にかけてカルテット界の神様的存在でしたね。しかし解散後急に聴かれなくなり、その辺の事情は指揮者のベームと似ているように思います。
私自身も、最近スメタナ四重奏団はあまり聴いていません。しかし最近感じるのですが、ベームにせよケンプにせよ、一世を風靡した音楽家というのは、たとえ忘れられつつあっても、先入観を捨てて虚心坦懐に聴いてみると、それなりのものがあったように思います。スメタナ四重奏団とかブダペスト四重奏団も一度またじっくり聴いてみたいと思っています。
2011.03.19 Sat 22:48 URL [ Edit ]

Re:アルトゥールさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

こちらこそ、ご無沙汰しております。

スメタナ四重奏団、日本では特に人気があったと伝え聴きます。晩年のベームもそうでした。なぜ日本で突出した人気があったのか、ときどき考えます。でも、音楽から特定するのは難しいです。スメタナについては、日本コロンビアで録音活動をしていたことが大きいような気がします。今は懐かしのPCM録音、あれは当時、音質面で画期的だったし、演奏のレベルも高いものでした。
四重奏団ではスメタナと、ブダペストの演奏に共感することが多いかもしれません。
2011.03.20 20:53

無題 - Higashi.H

「ズスケとかラサールのような、アリの這い出る隙もないような厳格な合奏でもって重厚に迫る演奏」私は、この感想はスメタナSQにこそ当てはまるもので、ズスケやラサールSQも何度も聞きましたが、スメタナSQに比べると、ずいぶん生ぬるい演奏だと思っているのですが…
2012.05.30 Wed 00:19 [ Edit ]

Higashi.Hさん、はじめまして - 管理人:芳野達司

アンサンブルやハーモニーの緊密さはズスケやラサール、あるいはアルバンベルクなどのほうが高いのじゃないかと思います。
スメタナは音の間にふんわり空気が入っているような、柔らかい手触りがあるような気が、私にはするのです。
どちらもいいものであり、そのときの気分によっていずれかを取り出します(最近、バリリのも気に入っています)。
2012.05.30 19:01
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