ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」 シェリング(Vn) ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管トゥルゲーネフ(沼野恭子訳)の「初恋」を読む。この作品を読むのは、高校か中学のとき以来。読み進んでいくうちに話の内容を思い出した。
この初恋は、甘酸っぱいというよりも激辛といったほうが近いでしょう。
この新訳がいままでのものに比べてどういった傾向にあるのかはわからないけど、読みやすかったし、ジナイーダの取り巻き連中がアホっぽくていい味を出している。
シェリングのベートーヴェンは、S・イッセルシュテットとの録音を好んで聴いている。この曲の長大さは、気分によっては退屈なくらいに感じることもなくはない。でもこの演奏は、ヴァイオリンの力強さに加えて、オーケストラのスケールがたいへん大きい。特に変わったことをしているわけではないが、ひとつひとつの音がじょじょに積み重なっていって、広がっていき、聴いているうちにじんわりと興奮してくるのだ。なにか特別なことをしているようには思えないのに、聴いているコチラは燃えてくる、そんなマジックを感じるのが65年盤。
73年盤は今回初めて聴いたが、ヴァイオリンそのものは65年盤よりもむしろ快調に思える。ここではキレの良さが光っている。堂々たるフォームに、鋭さが増していて、熱気もあってスリリング。ヨアヒムのカデンツァに対しても、手厚くて華麗だ。
ヴァイオリンの目覚ましさに比べると、オーケストラはややぬるい。細かいところへの気配りはあるものの、全体を通してみるとぼんやりした後味があり、退屈さを感じる。なので、トータルでは65年盤のほうがわずかにいいように思う。
1973年4月、アムステルダムでの録音。
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