ジュリアード弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲16番を聴く(1982年、ワシントン、アメリカ合衆国国会図書館クーリッジ・ホールでのライヴ録音)。
ジュリアードによるベートーヴェン後期もこれが最後。感慨深い。
この曲は、ベートーヴェンのまとまった作品としては生涯最後の作品。14番で7楽章まで肥大したスケールは、この曲では通常の4楽章になっている。密度が、濃い。
ジュリアードの演奏は、いつもにも増して、アンサンブルが緊密。音程もカッチリ合っていて痛快。彼らの後期はどれもいい演奏であり、その中でもこの16番は最高に位置するくらいに素晴らしい。
とくに、3楽章「レント・アッサイ」ではテンポをゆっくり目にとり、深遠な音世界を作っていて見事。
以前にも投稿したが、この終楽章では、序奏部の楽譜の下に、“Muss es sein?(そうあらねばならぬか?)”と記入してあり、第1主題の下には、“Es muss sein!(そうあるべし)”と書き添えている。
これが哲学をあらわしたものか、あるいは生活の小さな出来事を書いたものなのかは、永遠のナゾなのである。
屋根の上のパーティ。
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