アレクサンダー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲8番「ラズモフスキー2番」を聴く(1996年3月、カリフォルニア、ベルヴェデーレでの録音)。
アレクサンダー四重奏団によるベートーヴェンも中期。このあたりになると、技巧的な面も情緒的な味わいも初期に比べるとぐっと深くなってくる。なので、奏者の技量が試される音楽であろうと思われる。
と前回書いたが、この曲に関しては、切っ先鋭い、そして荒削りな演奏。アンサンブルの精緻さをひとまず横に置いて(と言っても、雑ではない)、勢い重視の音楽になっている。
ラズモフスキー2番は、中期の弦楽四重奏作品の中では、「ハープ」と並んで好きな曲。特に、2楽章と3楽章を気にいっている。2楽章は、初春の若葉の朝露のような叙情、3楽章は中間部のロシア民謡の快活なメロディーに心躍らないではいられない。
作った時期は、ベートーヴェンが35,6歳の頃。普通だったら、人生のなかでひときわ輝いている時期。ひどくとんがっているところもあれば、内省的な部分もあり、楽想は溢れんばかり。アレクサンダーのメンバーはそこを、おそらくわかっていて、荒いところは荒くやっている。とても、若々しい。でもそれは常軌を逸したものではなく、作曲家のパトスをまっすぐに伝えてくれているような感じがする。この演奏、全体を通した緊張感の持続が素晴らしい。
アレクサンダー四重奏団のこのボックスもそろそろ後期の聴取に入る。楽しみで仕方がない。
フレデリック・リフシッツ(ヴァイオリン)
ゲ・ファン・ヤン(ヴァイオリン)
ポール・ヤーブロウ(ヴィオラ)
サンディ・ウィルソン(チェロ)
パースのビッグムーン。
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