ベルリオーズ「幻想交響曲」 ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリュショネール・エ・ロマンティーク この録音、非常に残響が少ない。大きい和室で演奏されているかのようだ。
ひとつひとつの音を明瞭に聴かせようとする制作者の意図があるのだろう。
でもその効果は、大きいとは言い難い。
他の録音と比べて、音の多さは感じられないし、新しい発見をこの演奏から見出すことはできなかった。
ノン・ヴィヴラートによる切り詰められた響きは、鋭さや明快さを押し出しているというよりは、むしろ貧弱さが滲み出ている。
この曲においては、クリュイタンスとパリ音楽院管で聴けるような芳香や、ショルティのメカニカルに徹したいさぎよさ、またはミュンシュとボストンによるひたむきな感情の発露などを知っている耳にとっては、物足りないと言うしかない。
ベルリオーズが生きていた時代の響きは、もしかしたらこういう響きだったのかもしれないが、それがこういう演奏では、当時の音楽世界はあまりにも貧弱だったと思わざるを得ない。
そんなことはないだろうと思う。
残響のひどく少ない、乾いた音で奏でられる即物的な音色が、虚無的な雰囲気を醸し出している。
それだけが指揮者のねらいだったのだろうか。確かに、その効果はよく現れている。
ベルリオーズの見た夢は悪夢だったのかもしれない。だけど、悪夢にはさまざまな多様性があるものだ。この演奏がそれだとしたら、少々寂しいものがある。
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