ベルク ヴァイオリン協奏曲 パールマン(Vn) 小澤指揮ボストン饗筒井康隆の「富豪刑事」を読む。
主人公は大富豪の息子。湯水のようにお金を使って事件を解決していく様子が痛快。
この文庫は、4つの中篇から成っている。それぞれ、オトリもの、密室もの、誘拐もの、グランドホテルものと趣向が異なっていて、トリックはなかなかに面白い。
筒井の推理ものは少ないけれど、「ロートレック荘事件」や「フェミニズム殺人事件」など、専門の推理作家と同等かそれ以上の手腕をみせてくれるが、「富豪刑事」も例外ではない。
笑いやパロディの面白さもさることながら、本格推理も楽しませてくれる中篇集である。
この作品、少し前に深田恭子主演でドラマ化されていたらしいが、見そびれた。残念。
パールマンのベルクは、濃厚に甘い。
このヴァイオリニストの持ち味がじゅうぶんに発揮されている。予想通りといえばそうなのだが、これはこれで安心して聴くことができる。
臨場感に溢れ、溢れすぎてときにはヤニ臭ささえ感じる弾きぶりであるが、ヴァイオリンという楽器の魅力が満開である。
テンポをゆっくり目にとってじっくりと弾いているから、わりとくどい。だけど、こうした高カロリーの演奏もあってよい。というかひとつの立派な見識だ。
この演奏によるベルクは、難解さは皆無である。ひたすらヴァイオリンの響きに身をゆだねていればよい。
アルマの娘のエピソードも、この演奏の前にはあまり意味がないように思えるほど、「純」ヴァイオリンに徹していて気持ちがいい。
1978年2月、ボストンでの録音
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