ヘンデル 協奏曲集 ピノック指揮イングリッシュ・コンサート情欲作家の誉れ高い渡辺淳一の「冬のうなぎと夏のふぐ」を読む。
世間一般で言うところの季節ものには夏のうなぎのような根拠がないものも含まれているので、なるべく季節はずれに食ったほうが店がすいていていいよ、という題名の作品を含めたエッセイ集。
渡辺といえば、情欲とは無縁だけどすばらしく感動的な「遠き落日」と、日経新聞の朝刊に連載され、新聞記事と小説との異様なまでのアンマッチさがなんともいえなかった「失楽園」のさわりを知っているのみである。
このエッセイ集の中では、一時期騒がれた医師の不祥事についての話題が多い。
それらに対する批判が手厳しく、もともと医者であった著者の思い入れを感じることができる。
全体的には、日常生活のなんのことはない出来事や考え事をつらつらと綴った軽い読み物なので、寝る前に読んでも適当に中断することができる気軽さがあった。
最近、わりにヘンデルを聴く機会が多いのだけど、偽作の問題があったり、自分の曲を他の楽器のために編曲しているのものが多く、どれがいったいオリジナルなのか、またどういった順序で創作をしていったのかがいまひとつわからない。
研究が進んでいないのか、私の知識が不足しているのか。まあ後者だろう。
名前のわりによくわからないことが多いこの作曲家に、最近興味がわいてきている。
作品4-6には、ハープ協奏曲とオルガン協奏曲がある。どちらかがオリジナルだと思うのだが、このCDのサイトにはオルガンが原曲とあり、HMVのヘンデルの「concert」の一覧だとハープが原曲とある。よくわからない。
どちらが原曲でもいいし、どちらにも似合っている作品である。
冒頭の音は、上質なオルゴールを思わせるようなフシギなものだが、よく聴くとハープとリコーダーの溶け合う音である。
あたかも、がさつな我が家に天使が舞い降りてきたような、異空間がひらけてくる。
ハープの音色というものは、こうしてしみじみ聴いてみると、かぼそくて頼りないところがなんともいえない。
ウルズラ・ホリガーの弾くハープは、夢のように淡くて繊細なものだ。
このかよわさを、周囲の楽器がさかんにフォローしていて微笑ましい。ことにリコーダーがいい。
イングリッシュ・コンサートの古楽器は渋いながらも軽やかで、ハープと良くあっている。
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