ヘンデル「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」他 セル指揮ロンドン饗これは素晴らしく痛快な音楽。
じめじめした梅雨の気分を吹き飛ばすには絶好である。
ヘンデルはともかくとして、編纂しているハーティというヒトを知らないし、セルがどのような手を加えたかもわからない。
でも、ここにある音楽は、なんと生き生きとしていることか。
弦は輝くようにつややかで、木管は質実剛健、金管は華やかな彩りをもって鳴り響く。
だいぶ時代は下ったところのベートーヴェンやブルックナー、マーラーやシュトラウスですら、オーケストラをこんなに無邪気に響かせることは、なかったのじゃないだろうか。
ヘンデルはもちろんすばらしいが、ハーティやセルの見識も高かったのだろう。問答無用の天真爛漫さであり、大オーケストラの魅力満載である。壮麗としか言いようがない。
もっとも、当時の響きがこうであったとは、考えにくいことではある。
アーノンクールやガーディナーは、もっとキリリと引き締まった筋肉質で質素なオーケストラを聴かせてくれて、そっちのほうが当時の音に近いということは周知の事実らしい。
でも、このカロリー満載の音楽は、聴いていて楽しいことこのうえない。
セルといえば、クリーヴランド管との、禁欲的とすらいえるベートーヴェンやモーツァルトの演奏が印象的な指揮者であるので、このヘンデルの演奏を目隠しで聴いたら、セルの演奏だとわからないだろう。
なにが、セルにこのような演奏をさせるのだろう。ロンドン饗ということか。デッカということか。はたまた、ヘンデルだからか。
いずれにしても、聴いていてこんなに心が沸き立つ音楽も、珍しいものだ。
1961年、ロンドンでの録音。
PR