ヘンデル ヴァイオリン・ソナタ集 スーク(Vn) ルージチコヴァ(Cmb)村上春樹の「辺境・近境」を読む。
この旅行記、前にも読んだことがあったが、なぜかじわじわとうどんが食べたくなり、再度読み返してみた。
筆者が訪れたのは、イースト・ハンプトン、からす島、メキシコ、讃岐、ノモンハン、アメリカ、神戸。このなかでは、短いけれどやはり讃岐の巻が面白い。5つの店を紹介していてどれも実においしそう。
驚いたことには、客が自分でうどんを湯掻くなんていう店もある。
讃岐うどんは、茹でたての麺にしょうゆをかけたものが基本であるらしいが、この季節にもぴったりだ。
「打ちたての勢いのあるうどんに醤油をかけて、葱だけを薬味にしてつるつるつると食べる美味さ」、これを味わうためだけに足を運ぶ価値はあるのだろうな。
スークとルージチコヴァのヘンデル、ヴァイオリン・ソナタが6曲収録されている。
このCDは1975年に録音したものだが、その後の1982年に出版されたヘンデル協会の新全集によると、この録音当時にヘンデルの作とされていた6曲のうち、4曲までもが作者不詳の曲になってしまったらしい。
第1番イ短調 作品1の3 … ホンモノ
第2番ト短調 作品1の10 … 偽作
第3番ヘ長調 作品1の12 … 偽作
第4番ニ長調 作品1の13 … ホンモノ
第5番イ長調 作品1の14 … 偽作
第6番ホ長調 作品1の15 … 偽作
「疑惑のデパート」ならぬ「偽作のオンパレード」である。
こういうものって、何を根拠にしているのかわからないし、実際に聴いてみても、どこのどの部分がどのようにヘンデルじゃないなんていうところは、当然ながら、皆目わからない。
ちなみに私がこの中で気に入ったのは、3番、4番、6番である。どれもヘンデルらしい(というのははばかられるか)大らかな喜びとほのかな憂愁に満ちた曲だと思う。
偽作だからといって、スークの演奏は色褪せることはない。
スークの演奏は、生真面目で実直であり、その音色は密度が濃くて、たっぷりと黒い毛筆の太い味わい。
ルージチコヴァの堅実な伴奏は、過度な主張を控えたすがすがしいものだ。
1975年6月~7月、フランスでの録音
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