宮城谷昌光の「クラシック千夜一曲」を読む。
これは、作者が選んだ10曲についての解説と考え、そしていくつかのディスクの聴き比べをした著作。
宮城谷はクラシック通である。「私だけの名曲1001」という、どえらくマニアックな本を出している。図書館でパラパラと読んだが、あまりにも知らない曲ばかりなので読むのを諦めてしまった。
それに比べると、本書はとっつきやすい。人口に膾炙した音楽を選んでいる。初心者が読んでも面白い。
この言葉が印象的。
「三十代のなかばから貧窮生活にはいり、自分のなかから音楽がはがれおちてゆくという体験をしました。苦しい生活のなかでは、音楽を聴く気になれない、というのがほんとうです。しかしながら、たった二曲が残りました。バッハの「シャコンヌ」と「音楽の捧げ物」です」。
本当に苦しいと、音楽は聴く気になれないというのは同感である。音楽はどこまで人間を助けるのか。
ズヴェーデン指揮オランダ放送フィルの演奏で、ブルックナーの交響曲9番を聴く。
このオーケストラはフランス物を主に聴いたことがある。ハイティンクの指揮でベルリオーズの「ファウストの劫罰」や、フルネ指揮のフランス序曲集。どちらも軽快にして見通しいの良いもので、特に管楽器の質の高さに唸った。
ドイツ系ものを聴くのはこれが初めて。ある程度予想していたが、ここでも、とても明快なアンサンブルとソロを聴かせてくれる。よく練られた弦に加え、やはり木管と金管が前面に出ているように感じる。これは指揮者の指示というよりも、オーケストラの特性であるように思うがどうだろう。
ズヴェーデンは19歳の若さでコンセルトヘボウ管弦楽団のコンサート・マスターに就任したことがある俊英で、後に指揮者に転向し、現在はオランダ放送フィルの首席指揮者とダラス交響楽団の音楽監督を務めている。彼を聴くのはこれが2度目。直線的な音楽をする人であるが、副声部もしっかり鳴らせるところなどは好みである。
全体的に深刻ぶったところのない軽めのブルックナーであるが、こういう爽やかな演奏もまたいい。
2006年6月、ヒルヴェルサム、MCOスタジオでの録音。
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