谷沢永一の「人間通と世間通」を読む。
これは、古典文学の読解書。「イソップ寓話」から「日本文化史研究」まで11作品に対するエッセンスを開陳している。
ドストエフスキーの「悪霊」についてはこう述べている。
「全体の脈絡が統一されておらず、登場人物の描き方もたいへん偏頗であり、長編小説としては実にぶざまなところがある。多少とも人間像が多面的に描かれているのはステパンだけで、いちばん大切なはずの登場人物であるスタヴローギンなどは、これが作中人物、主人公なのかと言いたいくらい、その人間像は描かれていない」。
としながらも、「革命思想が、なぜ悲劇的かを解明した名著」と言っている。
「悪霊」は難解であるが、この章は難解にして混沌としたドストエフスキーの世界を端的に云い現わしているように感じる。
オッテンザマーのクラリネット、ヴラダーのピアノで、ブラームスのクラリネット・ソナタ1番を聴く。
ブラームスは1891年にマイニンゲン公爵に招かれて、その地の宮廷管弦楽団のクラリネット奏者ミュールフェルドの素晴らしさを知り、それが契機となってクラリネットの作品を書いたと云われている。
その作品は、クラリネット三重奏曲、クラリネット五重奏曲、そしてふたつのクラリネット・ソナタである。ソナタは1894年に作曲され、結果的に彼の最後の室内楽作品となった。
全体を通して、人生を悟ったかのような幽玄の世界が広がる。ことに2楽章は美しい。いろいろあったけど、まあ悪くない今までの人生を懐かしむようなフレーズは、ズンと心に沁み渡る。ブラームスは、何だかんだいってなかなかのメロディーメーカーだと思うが、この楽章はその中でも最も魅力的な音楽だと思う。
ブラームスのクラリネット・ソナタを知ったのはウラッハによるもの。録音は古いものの、甘くコッテリとして雰囲気のある演奏であった。
このオッテンザマー盤は、もっと洗練されている。音色はしっかりとしていて艶やか、仄めかしのない明晰なものでありつつ、淡い情緒がにじみ出た、いい演奏である。陰影も深い。クラリネットは音が大きいから、ピアノに負けない。だからヴラダーは思い切りよく弾いているように思われる。大胆にして繊細。
この曲の代表的なディスクとして推したい。
エルンスト・オッテンザマー(クラリネット)
シュテファン・ヴラダー(ピアノ)
1996年11月、ウイーンでの録音。
冷やし中華とツイッター始めました!テラス。
PR