東野圭吾の「誘拐電話網」を読む。
知らない男から電話がかかってきた。話を聞くと、子供を誘拐したから身代金を払えという。しかし主人公は独身男である。いたずら電話かと思うとそうではないらしい。子供の親に身代金を要求するのはあまりにも卑劣だから、他人に要求しているのだという。この電話番号はでたらめに押した。これも何かの縁である。子供を見殺しにすることは、君の良心が許さないだろう。「キングの身代金」あるいは黒澤の「天国と地獄」だって、本人は身代金を払ってはいないではないか。
そういう理屈らしい。
しばし考えた主人公は、おもむろに受話器を手にして。。
これは、昔はやった不幸の手紙の電話版。臆病で人が良くてずるい、普通の人が描かれている。
エレーヌ・グリモーのピアノでブラームスの間奏曲Op117を聴く。
この曲をグールドのピアノでときおり聴くのが好きである。なので、去年の秋に行ったレーゼルのリサイタルの演目に入っているのがうれしく(そのうえ、シューマンの「フモレスケ」とシューベルト20番ソナタと、これまた好物ばかりなのだった)、そして実際に素晴らしく冴えたピアノを聴くことができて、ますます好きになった。
このディスクは、グリモーがエラートに録音した6枚組のなかのひとつ。よって、間奏曲だけを目当てにしたわけではない。ただやはり、小鉢に入った料理がちょこんとお膳にのっているとうれしいもの。
グリモーの音色は、高音から低音にかけてバランスよく鳴るが、ことのほか中音がいいようだ。適度にどっしりしていて、適度に輝いている。わずかに靄がかかったような音色は、夜の音楽にふさわしい。
そうした音色は、録音の按配のせいもあってのことだろう。残響が多めに録られているから、実際にホールで聴くのと近い音が出ているように感じる。
グリモーのピアノ、細かいニュアンスが素敵だ。
1995年11月、ノイマルクトでの録音。
おでんとツイッターやってます!八甲田その11。
買っちゃいました。
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