奥田英朗の「真夜中のマーチ」を読む。
これは、偶然に知り合った男女3人組による現代の冒険活劇。
怪しい芸能プロダクションを経営するチンピラと、一流商社に務めるサラリーマン、そして謎の女。この3人がやくざの金を盗もうと企てる。
淡い恋あり、サラリーマンの悲哀あり、親子の確執あり、笑いありと、中身は盛り沢山。
飽きずに一気に読み進んだが、あまりにもできすぎた話なので、後味は薄い。
ヘルシャーのヴァイオリン、ベトヒャーのチェロ、そしてマリナーの指揮でブラームスの「二重協奏曲」を聴く。
この曲、昔は苦手だった。
重苦しいし、メロディーもいまひとつ冴えないし、ふたつの独奏楽器の位置づけが曖昧な気がしたのだ。
だからしばらくこの曲を聴いてこなかったが、ある時たまたまフリッチャイのCDを購入し(目的はカップリングのベートーヴェンの三重協奏曲だった)、聴いてみたら良かった。
演奏がいいということが原因のひとつでもあろうが、自分の嗜好が変わったことのほうが大きいのだと思う。ブラームスの渋さを愛好するようになったのは、それからだ。やがて、ピアノ独奏曲や室内楽曲も積極的に聴くようになった。
さて、マリナーがリードするこの演奏。重すぎず軽すぎない適度な重量感が心地よい演奏である。
ふたりの独奏者もいい。ヘルシャーのヴァイオリンはとりたてて美音というわけではないものの、オケとチェロの音にじっくり耳を傾けて、バランスのよい演奏をしている。木目調の響きがいい。
ベトヒャーのチェロも同じく、音量のバランスに気を使っている。通常、チェロはヴァイオリンよりも音が小さいが、ここでは対等に鳴っている。録音の匙加減もあるかもしれないが、それにしては自然だ。
マリナーの指揮は力みがない。肩の力を抜いて深呼吸するようなおおらかさがある。中庸なテンポをとりつつ、キッチリとソロに合わせている。
2楽章の6分10秒あたりでじわじわと盛り上がるところなど聴くと、3人の中年男+オケのメンバーが作曲家に率直な敬意を抱いているのかがわかる。
ウルフ・ヘルシャー(ヴァイオリン)
ヴォルフガング・ベトヒャー(チェロ)
ネヴィル・マリナー指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団
1980年7月、シュトゥットガルト、南ドイツ放送局での録音。
青空。
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