ブラームス ピアノ・ソナタ3番、他 ペーター・レーゼル(Pf)内田樹の著述は、サイトに公表しているものだけでも
まとまった量があるので、これを読んでいればかなり満足できるのにも関わらず、文庫本が発売されると思わず手に取ってしまう。
紙の本が好きなのと、同じことを繰り返し読み返すのを気に入っているからだろう。
ご本人が言っているように、書かれた内容は先人たちの影響が強いらしいし、前に言ったことの反復だったりすることも感じる。納得できる見識であれば繰り返し読みたくなるものだ。
そしてなによりも、読み返したくなる大きな要因は、楽しく読むことができる「文章」であることだろう。これが重要。どんなに卓見であっても、悪文であればだいなしだ。逆に、文章そのものに魅力があれば、考えは拙くてもいいくらいだ。
どうもそんな気がする。じゃあ、このブログはなんなの? なんてきかれても、そこは笑ってごまかすしかないけどネ。
今週に聴いたレーゼルのブラームスは、彼が20代に残した記録。若さよりもむしろ老成した落ち着きを感じる演奏。
ブラームスの3番のソナタは、世評はどうも高くないみたいだが、昔から好きな曲だ。とくに、最初の3つの楽章がいい。
ここでは、わけのわからない暗い情熱が荒れ狂っている。スケルツォなんかを聴くと、ピアノがこんなに強く鳴る曲は他にそう多くないんじゃないかと思うくらい。リミッターを解除した激しさだ。それは、きちきちに考え抜かれた形式のなかだからこそ、より映える。
レーゼルは注意深く激しさを抑制し、厚い響きでもって夜の帳の匂いを醸し出している。
カップリングの「シューマンの主題による変奏曲」や「バラード」のほうが、演奏はさらに優れているかもしれない。
1972,73年 ドレスデン、ルカ教会での録音。
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