ブラームス ピアノ協奏曲第2番 リヒテル(Pf) マゼール指揮 パリ管弦楽団処暑を過ぎたとはいえ、まだまだ暑い埼玉の日曜日である。外を歩くのは億劫であったので、今日は引きこもってテレビを少し、読書を少し、あとは音楽。
先日、
sweetbrierさんが「夏の風の中で」について記事にされていたのを拝見し、シノーポリの演奏も聴いてみたいと思っていたのだが、たまたま棚をあさっていて、みつけた。
一年くらい前に購入して、聴く機会を窺っていて忘れていたのだ。得をした気分で「夏の風」と「パッサカリア」、「6つの小品」を聴いた。いくらか涼しくなったみたい。これらについてはいずれ記事にしようかと。
ブラームスの音楽はだいたい暑苦しいが、独特の半音階の響きからはときに清涼感を感じる。
リヒテルが「オーケストラのやる気がなくさんざんな録音だった」と言ったこの録音、本人がこう言うわりには相当いい出来だと思う。
冒頭のホルンからもう魅せられる。こんなに深くて輝かしい演奏は滅多にお目にかかれない。
アンサンブルの精度という意味ではそれほど精緻な演奏ではないかもしれないが、そのせいなのかどうか、オーケストラに膨らみがあってボリューム感がたっぷりだ。
リヒテルの演奏は、几帳面にして大胆。きっちりとしたメリハリのなかに、大きなダイナミックと繊細さを兼ね備えている。第1楽章の前半あたりは、比較的一本調子な感じであるが、だんだんと調子があがっていって、終楽章は大きなスケールに加えて細部の音色がとても鮮やかで透明感のあるピアノを聴かせてくれる。
この曲においては、始めの3楽章に比べて終楽章がかわいらしいという印象があるが、この演奏ではこの終楽章にとても広がりがあって、変幻自在、大変手応えのある聴きものとなっている。
マゼールの指揮は見事にピアノについていっていてスキが見当たらない。それに、微妙な変化をつけている。大きな変化ではなく、カットボールみたいに手元で急に曲がってくるようなものだ。
それが具体的にどうかと説明するのは難しいけれど、なにげなくスパイスを少々効かせた味付けという感じ。
何度聴いても飽きのこない、不思議な名演奏だと思う。
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