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リヒテルのブラームス「ピアノ協奏曲第2番」

2007.08.26 - ブラームス
BRAHMS

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 リヒテル(Pf) マゼール指揮 パリ管弦楽団



処暑を過ぎたとはいえ、まだまだ暑い埼玉の日曜日である。外を歩くのは億劫であったので、今日は引きこもってテレビを少し、読書を少し、あとは音楽。
先日、sweetbrierさんが「夏の風の中で」について記事にされていたのを拝見し、シノーポリの演奏も聴いてみたいと思っていたのだが、たまたま棚をあさっていて、みつけた。
一年くらい前に購入して、聴く機会を窺っていて忘れていたのだ。得をした気分で「夏の風」と「パッサカリア」、「6つの小品」を聴いた。いくらか涼しくなったみたい。これらについてはいずれ記事にしようかと。


ブラームスの音楽はだいたい暑苦しいが、独特の半音階の響きからはときに清涼感を感じる。
リヒテルが「オーケストラのやる気がなくさんざんな録音だった」と言ったこの録音、本人がこう言うわりには相当いい出来だと思う。
冒頭のホルンからもう魅せられる。こんなに深くて輝かしい演奏は滅多にお目にかかれない。
アンサンブルの精度という意味ではそれほど精緻な演奏ではないかもしれないが、そのせいなのかどうか、オーケストラに膨らみがあってボリューム感がたっぷりだ。
リヒテルの演奏は、几帳面にして大胆。きっちりとしたメリハリのなかに、大きなダイナミックと繊細さを兼ね備えている。第1楽章の前半あたりは、比較的一本調子な感じであるが、だんだんと調子があがっていって、終楽章は大きなスケールに加えて細部の音色がとても鮮やかで透明感のあるピアノを聴かせてくれる。
この曲においては、始めの3楽章に比べて終楽章がかわいらしいという印象があるが、この演奏ではこの終楽章にとても広がりがあって、変幻自在、大変手応えのある聴きものとなっている。
マゼールの指揮は見事にピアノについていっていてスキが見当たらない。それに、微妙な変化をつけている。大きな変化ではなく、カットボールみたいに手元で急に曲がってくるようなものだ。
それが具体的にどうかと説明するのは難しいけれど、なにげなくスパイスを少々効かせた味付けという感じ。
何度聴いても飽きのこない、不思議な名演奏だと思う。
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Comment

無題 - sweetbrier

吉田さん、こんばんは。
リンクしてくださってありがとうございます<(_ _)> 吉田さんちにウェーベルンのエントリーが増えるのを楽しみに待ちます。

今日取り上げておられる作品、私はまだ聴いたことがありません(しゃしゃり出てきてすみません)。吉田さんが書いていらっしゃるリヒテルの演奏…

> 几帳面にして大胆。きっちりとしたメリハリのなかに、大きなダイナミックと繊細さを兼ね備えている。(中略)大きなスケールに加えて細部の音色がとても鮮やかで透明感のあるピアノを聴かせてくれる。

とてもよい録音、という印象を持ちました。

> ブラームスの音楽はだいたい暑苦しいが

そうなんです~、コワモテのイケメンみたいで。でも「独特の半音階」は魅力だし、この作品から始めようかな、と思いました。ありがとうございました。
2007.08.26 Sun 23:50 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

暑さも、朝と夜はだいぶ落ち着いてきましたね。
昨日、思いがけなくシノーポリのCDを見つけたときは、嬉しかったですね。それで、パッサカリアなんかをいくつか聴き比べてみたのですが、この作曲家の中でも「夏の風」は比較的録音が少ないですね。大変面白い曲なのでもっといろいろな指揮者がやればいいと思います。

ブラームスの2番は、重厚長大ですが全編がわりと明るい色調で書かれています。いくつか聴いた中では、このリヒテル盤が一番しっくりきました。
機会がありましたらお聴きになると面白いかも知れないですよ。
2007.08.27 06:54

無題 - nozart1889

吉田さん、おはようございます。
この演奏は大変面白いですね。何回聴いても飽きません。リヒテルのピアノは豪壮雄大で、スゴイです。オーケストラに「かかってこいや」と云わんばかりの強烈なピアノでした。
対するマゼールも、微妙な変化で応じて、どんどん感興が高まっていきます。
スタジオ録音なのに、実にライヴ的なスリリングな演奏だと思います。「競奏」という感じでしょうか。
2007.08.27 Mon 04:41 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントとTBありがとうございます。

mozart1889さんが以前記事にされていたのをみて、いつ取り上げようかとタイミングをうかがっていました。
ホントにこれは何回聴いても飽きないのです。不思議な演奏です。ピアノもオケもバリバリ弾いているうえに、デリケートな部分もたくさんあって聴かせます。
録音現場では、お互いがあまりしっくりいかなかったらしいですが、そういう緊張感からこういう「競奏」が生まれたのですかねえ。
2007.08.27 06:58

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

関東地区は割と涼しくなって来ているようですが、こちらはまだまだ暑いです。
ブラームスの2番のコンチェルト、シンフォニー並みの大きさですね。昔は、バックハウス・ベームの録音を聴いたものでしたが、今はまったく聴いていません。

リヒテルとマゼールの演奏、面白そうですね、マゼールがどんなサポートをしているのか、それを知りたい感じがしますね。

ミ(`w´彡)
2007.08.27 Mon 09:12 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
今日は蒸し暑く、汗が滴り落ちます。明日から雨らしいのですずしくなるといいのですが。

バックハウス・ベームのは名録音の誉れ高いですね、私も最近はあまり聴いていません。
マゼールの演奏は、いろいろと動かしているみたいです。具体的にどうかとはいえないのですが、どうも普通ではないですね。
この演奏ではパリ管がとてもいいです。
2007.08.28 08:54

無題 - ruiros2019

mozart1889さんHPにもコメントをいれました。
当然ですがリヒテルは個人の音楽観に強いこだわりがあり、同時期‘69にいれたカラヤンとのトリプルコンチェルトにおいてもオイストラフとももめて相当、現場は緊張したとのこと。有名なトリプルのジャケット写真でロシア3大ソリストが無理に笑ってるのにカラヤンが一人ムカついてピアノの前で座ってる内訳の詳細は当時のレコード芸術誌に興味深くしるされていたものでした。
リヒテル/マゼールの組合せでバルトークのP協
ブラームスのダブルコンチェルト(オイストラフ&セル)
同Vnコンチェルト(オイストラフ&ロストロ&セル)
を含めたEMI企画のこの不滅の5枚は時折、幾度と無く、繰り返し鑑賞しております。
2007.09.07 Fri 12:00 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

トリプルコンチェルトの録音現場は、リヒテル、オイストラフ組対カラヤン、ロストロ組だったらしいですね。解釈についても各人さまざまだったようですが、ロストロがあまりにカラヤンよりな態度なので、リヒテルたちは腹を立てていたらしいです。
>リヒテル/マゼールの組合せでバルトークのP協
まだ聴いていません…。
>ブラームスのダブルコンチェルト(オイストラフ&セル)
重厚な演奏です。
>同Vnコンチェルト(オイストラフ&ロストロ&セル)
スケール豊かでしびれます。

リヒテルのバルトーク、気になります。
2007.09.08 10:23
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