城山三郎の「部長の大晩年」を読む。
三菱製紙の社員でありながら俳人として活動を続けた永田耕衣の人生を描いている。
この仕事は自分には合わない、といいつつ同じ会社で定年まで勤め上げたところが面白い。
俳人としてもその世界では著名な人物だったらしいのだが、専業ではやらなかったのは、俳句では食べていけないからだったのだろう。
この人は97歳まで生きているので、55歳で定年退職してから40年あまりの時間があった。
その時間を俳句や骨董につぎ込んで、充実した人生だったようだ。
平均年齢が上がっている現在、定年後の余生をどう過ごすかは多くの人の課題だろう。
私も、ぼんやりとだがそろそろそういうことを考えるトシになってきた。
「サンデークラシックワイド」を聴く。
プロ野球が気になったので、ヒンデミットのヴィオラ・ソナタを最後に聴くのをやめてしまったのはもったいなかったかも。
タベア・ツィマーマンのヴィオラとハルトムート・ヘルのピアノ。
ヒンデミットのこの作品、彼が24歳の時のものだという。
彼の有名な作品の多くは、あまり愛想のよくないというかとっつきづらいものだけれど、このソナタにはすぐに引き込まれた。若い頃の作品と言われればその通りの、率直に力の入ったとてもみずみずしいロマンに溢れた音楽だ。
19世紀前半のものだと言われたら納得してしまいそうな、そんな古風なところがある。
ヴィオラ奏者は、もともとヴァイオリンを習ってから転向するケースが多いらしいが、ツィンマーマンは3歳からヴィオラ一筋40年。のびやかにヴィヴラートがきいた音色は安定していてほどよく厚い。
ヴィオラを聴く醍醐味がここにある、といえるくらい魅力のある響きである。
ヘルのピアノはこれも安定感抜群。スキがない。粒だったひとつひとつの音は芯があってかつ柔らかい。
でしゃばらず引きこもらずで、ヴィオラとのバランスも申し分ないように感じた。
2008年5月27日、ドイツ・シュヴェツィンゲンのロココ劇場の収録。
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