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"オリエント急行殺人事件"、カニーノ、"ゴルトベルク変奏曲"

2015.01.24 - バッハ





シドニー・ルメット監督の「オリエント急行殺人事件」を観る。

先日に、野村萬斎がポアロを演じたテレビがなかなか面白かったので、改めてアメリカ映画のほうを観たくなった。観るのは30年ぶりくらいかな。

冒頭から雰囲気がいい。どっしりとした映像に華麗な音楽。あたかも本編の完成度の高さを約束してくれるよう。
ポアロ役のアルバート・フィニーは、当時は30代であったが、見事に老け役を演じている。ラストの長大なセリフは、わずか数カットできっちり仕上げている。
出演者は豪華すぎるし、誰もが輝いている。強いて言えば、車掌役のジャン・ピエール・カッセルの抑えた演技がとてもいい。いかにも実直な鉄道員といった風情。秘密を暴かれて涙を流すシーンでは、思わずもらい泣きしてしもうた。
あと伯爵夫人をやったジャクリーン・ビセット。この頃が彼女の最盛期だっただろうか。美しすぎる。

野村萬斎の作品はクリスティ原作というよりも、この映画を下敷きにしたことは明らかだ。それほど、この演出は端的にして雄弁。
やはりシドニー・ルメットは、コッポラと並ぶ1970年代アメリカ映画のエースであろう。









カニーノのピアノでバッハの「ゴルトベルク変奏曲」を聴く。

このピアニストをきちんと聴くのは初めて。伴奏をするピアニストとしては有名らしいから、どこかで耳にしているかもしれないが、彼を特段意識したことはない。

最初のアリアで魅せられた。装飾音の扱いが、とてもセンスがいいから。少し多めにつけているが、まったくうるさくない。ときおりみせるスタッカートのアクセントも味がいい。
音はやや硬質であり、すっとよく伸びる。現代グランド・ピアノの凛々しい音色だ。

変奏曲8における装飾音、このようなつけかたは初めて聴いた。さりげなくも強い印象が残る。
変奏曲25のアダージョは、8分以上かけている。テンポはそう遅くないので、反復をしているのだろう。ゆっくりとしたこの曲に比重を置いている。他の変奏曲の歯切れがいいから、バランスがとれている。
変奏曲28も好きだ。キレのよさを保ちつつ、とても柔らかなタッチでもって、羽毛のように軽やかな音を紡ぎ出す。
変奏曲30は淡々として潔い。

全曲を通して76分強。聴き終わるとほどよい疲れが残る。
この録音はライヴであるし、1日で録っているから、いいところをツギハギしたものではなさそうだ。それにしては瑕疵がない。完璧に弾ききっている。一発録りであったなら、カニーノはすごいテクニックの持ち主である。


1993年1月17日、ルガーノ、スイス・イタリア語放送オーディトリアムでの録音。



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ma


八甲田。









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Comment

ポアロシリーズ、よく観てました - yoshimi

こんばんは。
コロンボとポアロ(それに警部マクロード)は好きなキャラクターなので、映画やTVドラマはよく観てました。
「オリエント急行殺人事件」は、小説を読んでいなかったので、「結末を知らずに観ていて面白かったです。
イングリッド・バーグマンも出てましたね。
若い頃のバーグマンが好きだったので、映画はほとんど見ました。
音楽ものなら晩年の「秋のソナタ」という映画に出てました。

カニーノのゴルトベルクは、CD化する目的で録音したわけではないでしょうから、編集していないと思います。
ミスタッチがほとんどないことと、装飾音も即興的で臨機応変なところは、伴奏ピアニストとして信頼されている理由の一つなのでしょうね。
それにしても、76分も弾いていたとは気が付きませんでした。
長さを感じさせないくらいの魅力があるゴルトベルクです。
2015.01.24 Sat 20:09 URL [ Edit ]

yoshimiさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

私もコロンボは観ていました。当時はNHKでやっていて、あのテーマ曲がとてもかっこよく印象的です。
ルメット監督の「オリエント急行殺人事件」はオールスターですね。「史上最大の作戦」もかくやと思う程の。
バーグマンは好きで、「カサブランカ」やヒッチコック作品で馴染んでいます。監督は彼女を伯爵夫人にと考えていたところ、バーグマンはどうしても乳母をやりたいといったそうです。監督曰く、「バーグマンが出るならば、ポワロでもよかった」。

カニーノのゴルトベルクは、やはり編集していないですか。録音が自然なのでそうかなとは思いました。
テンポは比較的速いのに75分を超えているから反復を忠実に行っているのでしょうね。
いい演奏です。
2015.01.25 21:32

ブルーノ・カニーノ - 木曽のあばら屋

こんにちは。
カニーノのゴルトベルク、1枚もののCDで持ってました。
リピートで即興的な装飾音を多用、明るく才気あふれてますね。
軽妙さ漂う、余裕を感じさせる演奏で、深刻さとか大上段にかまえたところが全くありません。

カニーノの録音では、アッカルドと組んだモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全集も持っています。
これもイタリアの陽光輝くような華やかで軽快な演奏。
あっけらかんと、どこにも陰りがなく、個人的には超好みです。
2015.01.25 Sun 09:55 URL [ Edit ]

只者ではありません。 - 管理人:芳野達司

木曽のあばら屋さん、こんにちは。
カニーノのゴルトベルクは1枚ものでお持ちですか、さすがです。
仰る通り、軽妙でゆったりとした演奏ですね。これだけのピアノを弾けるとは、普通ではありません。この人のピアノをもっと聴きたくなりました。バッハもいいし、ベートーヴェンあたりもよさそうです。
アッカルドとコンビを組んでいるのですね。このヴァイオリニストもまた軽快な演奏を聴かせる人なので、合っているのでしょう。
2015.01.25 21:36
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