ドヴォルザーク ピアノ協奏曲 フィルクスニー(Pf) ノイマン指揮チェコ・フィルおもむろにNHK-FMを聴き始めた。オーケストラの音あわせかと思っていたら、様子が違っていて、どうも本番の演奏に入っているようだと気付く。なんともとりとめのない音の羅列は20世紀の音楽だと踏んでいたところ、妙にとっつきやすいメロディーがあらわれる。弦楽器は古楽器であり、ティンパニーも昔風の音だ。ブリュッヘンの音を思い起こさせる。
となると、古典派以前の音楽なのだろうかと想像するが、それにしては音がごちゃごちゃとしていて近現代風で、今まで聴いたことのない音楽だ。
となると、もしかしたら、20世紀の音楽を古楽器で演奏するという、時代考証を抜きにした全く新しい試みなのかと思い、わくわくしてくる。などと考えていたら、金管楽器とティンパニーが華やかに曲を締めくくっていた。
解説を聞くと、シューベルトの「レンダリング」。ベリオ編曲だという。なんだこれは。後で調べたところによれば、ベリオが試みたシューベルトの交響曲ニ長調の補筆であり、1989年に最終的に自分の様式で完成させた曲であるらしい。いくつか録音はあるが、古楽器で演奏されるのはきわめて珍しいとか。
演奏家は当たっていた。私でも当てられるほど、ブリュッヘンの個性は強いということか。しかしこうして目隠しで知らない音楽を聴くと、いろいろ想像が溢れてきて楽しい。ことに古典派以前の曲を近現代の人が編曲したりすると、もうまるで時代がわからなくなる。
この原曲については知らなかったので、まるで現代に作られた音楽のように新鮮に聴こえたのが面白い。ラジオの魅力である。
勝手にドヴォルザークの日ドヴォルザークのピアノ協奏曲は、個人的に数年前にマイブームであった。それは、演奏会のプログラムに載っていたため、予習で聴いていて気に入ったのである。
冒頭からドヴォルザーク特有の懐かしさ溢れる旋律が炸裂していて、一気に引き込まれる。曲の段落というか節目のところのつなぎ目が不器用でなので、通して聴いているとあまりスマートではないが、それを補ってあまりあるくらいにすばらしいメロディーが奏でられる。とても上等な生地を使っているけれど、つなぎ目がざっくばらんなので、無骨な背広みたいだ。品質は文句ないのだが、全体的には垢抜けない感じ。
フィルクスニーのピアノはすばらしい。みずみずしくて端正な音を惜しみなく披露している。この人の録音は日本ではあまり多くを見かけないが、シューベルトやモーツァルトのCDはあるのだろうか。もしあるのだったら、是非聴いてみたいものだ。
ノイマンの伴奏もすばらしい。驚きはないけれど、ソツがなく実にまっとうだ。
この曲ではリヒテルとクライバーのものが有名であり入手しやすいものだけど、両雄共に遠慮しているようで結果的に凡庸な出来になっており、演奏はこちらが数段いいと思う。
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