ドビュッシー 「海」「牧神の午後への前奏曲」「映像」 ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団クリーヴランド管の醸し出す音響は、精緻でひきしまっており華やかであり、もう言うことなし。
これは指揮者の指示によってこうなっているということもあろうが、もともとの性質によるところが大きいのだろう。
ブーレーズの音楽はここでも「完璧に対する情熱」をふんだんに注いでおり、これ以上こと細かく再現することは想像に難い。
出てきた音楽はまったく暑苦しくなく、ひんやりとしていた肌触りがある。よって、蒸し暑いこの時期にふさわしい。かといって冬はどうなのかといえば、それはそれでまた一興かもしれない。ようするに季節に拘泥しない、というか季節感のない金属的華やかさに溢れているのが彼の音楽なのだ。
部分的には、打楽器が弱音で奏するところがいい。響きが細かくて、適度な緊張感が心地よい。
逆に、「イベリア」の激しく舞踏的な部分は、あまりノリがいいとは言えず、大音響が空回りしているようだ。
ブーレーズは昔の頃のほうがよかったとよく言われる。確かにこのドビュッシーについても、ニュー・フィルハーモニア管とのもののほうが鋭いかもしれない。
とはいえ、演奏家にも旬があるものだ。その多くは、若い頃がそれに当てはまるだろう。技術も体力もあり、やる気に満ちているはずだから。
指揮者の世界では「50、60は洟垂れ小僧」なんて言うらしいけど、誇張もはなはだしい。どこかの老人が若さを妬んで言ったことに過ぎないだろう。
クラウディオ・アラウみたいに、晩年になって突如すごい成熟をみせるヒトもいるけれど、そういうことは滅多にないことだ。
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