アレクシス・ワイセンベルク(Pf) スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮 パリ音楽院管弦楽団ワイセンベルクというピアニストは、個人的にはキワもののイメージがあった。少し(だいぶ?)前になるが、70年代後半から80年代前半のことである。
カラヤンと録音したベートーヴェンの協奏曲において、ピアニストはカラヤンのイエスマンであるというような評を読んだことがあるし、黒柳徹子の番組ではピアノに対して後ろ向きに立って、腕を後ろに回して曲を弾くといった曲芸まがいのことをやっていたことが印象に残っている。
それからしばらくたって、彼が録音した演奏を聴くと、けっして色もので事足りるものじゃなく、まっとうなピアニストだということがじわじわとわかってきた。
多くを聴いているわけではないが、ジュリーニとのブラームスは渾身の名演といえるものであるし、DGに入れたドビュッシーもいい演奏なのである。
このショパンは、彼が30代後半のもの。
粒立った明快な音色はこの時代から際立っている。特に、高音域の鮮やかさが目立つ。明るくて乾いた音色でもって、決してもったいぶることがない率直なピアノが気持ちいい。
だから陰影は深いものじゃなく、どの場面においても「明」に寄ったものである。単純明快でありつつ、ショパンの悲しげな詩情はたっぷりなのだ。
バックのパリ音楽院管は、管楽器の味わいがいつも楽しみだが、この演奏では滋味深い弦も聴きもの。2楽章では、柔らかな響きが重層的なハーモニーを厚く包んでいる。じっくり渋く低音を支えているファゴットの音色もいい。録音は管楽器が奥に引っ込んだものだが、要所で、ピリリとスパイスを効かせている。さまざまなパートに気を配った指揮ぶりである。いい演奏。
1967年9月11-13日の録音。
以前から気になっていた平林寺に赴く。
もとは岩槻にあったものを、1663年に松平輝綱がこの野火止に移転したものだという。
謎の小屋。
野火止用水にかかる橋。1メートルあるかないかの幅に、水がどんよりと澱んでいる。これを退廃というのだろう。
この寺、全体的に実にシブい。上級者向けの仏閣である。
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ワイセンベルクのピアノ、冴えています。黒柳さんの番組では、サーカスみたいなことをやって悦にひたっていたように感じましたが、このショパンはいいものと思いました。番組よりだいぶまえの録音なのですが。
スクロヴァチェフスキーの指揮も、丁寧ですばらしい。