「いかなる自然も技術より劣ることはない。なぜならば、諸技術は種々な自然の模倣なのである。そうだとするならば、あらゆる自然の中でもっとも完全でもっとも包容的な自然が、巧みな技術にひけをとるはずはない。」(第11巻-10)。
ガーディナー指揮ジ・オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークの演奏で、シューベルトのミサ曲5番「荘厳ミサ」を聴く。
シューベルトは6つのミサ曲を作っている。最初の4つは若い頃のもの。最後の6番は晩年に完成されている。この5番の作曲はその中間の時期にあたり、1819年に作曲され、1822年に第2稿を仕上げている。彼が25歳ころのこと。
このあたり彼はオペラを中心に作曲をしており(多くは未完成のままで終わっている)、この曲に「荘厳ミサ」と名付けたのもある意味気合いが入っているということと理解する。
ただ、全曲通して聴いてみて、完成されてはいるものの、推敲がじゅうぶんに行き渡っていない感がある。シューベルトが作ったミサ曲という形式に対する慣れの問題なのであろう。バッハのロ短調や、ベートーヴェンのものとは様相が異なる。
とは言え、音楽は聴いて浮遊するようなトキメキのメロディーに満ち溢れている。合唱が主体となる音楽であり、これが最大の聴きどころとなるが、抒情に溢れた瑞々しい歌を聴かせてくれる。
ガーディナーのオーケストラは、初演当時の楽器のリメイク。細いバチで叩かれるティンパニは痛烈。ホルンは素朴。弦楽器はあまり前面に出てこない。ピリオド奏法の限界なのか、ガーディナーの趣向なのか。
この曲には、いくつかのフーガが登場する。
シューベルトは晩年になっても対位法に対して自信が持てなかったため、挙句の果てに、生涯最後の数週間にフーガのレッスンを受け始めたそう。
なんという話であろうか。
モンテヴェルディ合唱団
デボラ・ヨーク(S)
サリー・ブルース=ペイン(MS)
ニール・アーチャー(T)
マイケル・ジョージ(B)
ロバート・バート(T)
1997年2月、アテネ、メガロン・コンサート・ホールでの録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR