シューベルト「弦楽四重奏曲15番」 ベルチャ四重奏団宮沢章夫のエッセイ「牛への道」は、新聞の囲碁欄に対する考察が笑える。朝日新聞の囲碁記事から。
「ところが、黒6とハネられると、ダメづまりのため白イと切っても黒ロのガチャンが先手になり、黒ハで一巻の終わりだ」
わからない者には何の手もさしのべない。わからないやつなんか知ったことか。そう言わんばかりの姿勢が立派であるといい、筆者は感服している。
確かに、新聞の囲碁・将棋欄は、世間とはちょっと隔絶した雰囲気が濃厚である。あたりまえに掲載されているから、あまり気にしないが、考えてみるとなかなか奇妙だ。
そして作者が最後に着目したのは、観戦記者の名前の「阿修羅」。
ひと昔は、こんなペンネームが多かった。あれはなんだったのだろう。
シューベルトの15番は、ため息のような嘆き節が随所に聞こえる音楽である。弱々しさがしくしく漂う。もともと大曲だし、この演奏では50分を超える。こんなにせつなく、儚くて美しい音楽もそうそうない。
ベルチャ四重奏団は、甘い音を惜しみなく放つ。涙に濡れた瞳のように、しっとりと輝く。ときに、痛いほど切れ味がよい。
いい演奏である。
コリーナ・ベルチャ=フィッシャー(1Vn)
ローラ・サミュエル(2Vn)
クシストフ・ホジェルスキ(Va)
アントワーヌ・レデルラン(Vc)
2009年5月、イギリス、サフォーク州、ポットン・ホールでの録音。
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