シューベルト ピアノ五重奏曲「鱒」 ルドルフ・ゼルキン(Pf)、他オーソン・ウェルズの「市民ケーン」を観るのは、高校の時以来。最初、「市民権」だと思っていた。
当時は名画座が東京のいたるところにあったので、こういった古い作品を映画館で観ることができたが、今は家の小さな画面で観るよりない。
話の構成やカメラワークの面白さは、今もぜんぜん色褪せない。ラストは泣かせる。
ウェルズの演出はすごいが、一番いいのは、顔だと思う。
ルドルフ・ゼルキンと仲間たち(マルボロ音楽祭のメンバーらしい)による「鱒」は、音の分離がとてもよい。
コントラバスの重い響きがボンボンと、ジャズのトリオみたいに聴こえてくるところは面白いし、目鼻立ちのよいヴァイオリンも元気があっていい。それぞれ自己主張をしていながら、アンサンブルの精度は高い。響きそのものはカラッとして明るいものの、ときおりぐっと影がさす。そこがシューベルトなわけで、これを深みがあると感じるか、あるいは単に分裂していると思うのかはその時の気分にもよる。
ゼルキンのピアノは終始存在感がある。これは顔だろう。技術面では、音色が多彩なところが印象的。3楽章のトリルや5楽章の速いパッセージなどは、転がるように丸い肌触りで、なんとも気持ちがいい。
ルドルフ・ゼルキン(Pf)
ハイメ・ラレード(Vn1)
フィリップ・ネーゲル(Va)
レスリー・パルナス(Vc)
ジュリアス・レヴィンス(Cb)
1967年8月、ヴァーモント、マルボロでの録音。
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