シューベルト ピアノ・ソナタ第14,17番 内田光子(Pf)久々に近所の図書館に足を運んでみた。もともとCDの在庫が少ない図書館であるが、いくつか目新しいものがあった。そのなかに、なんと内田光子の弾くシューベルトのピアノ・ソナタが、バラではあるけれども全部揃えてあった。ショパンのスケルツォすら置いていない図書館なのに、これはすごい。
というか渋い。渋すぎる。
図書館司書なのか利用者なのか、誰が選んでいるのかわからないが、全体のバランスを無視したこの選択はある意味で快挙である。
そういうわけで、せっかくなので借りてみたのが好きな17番の入ったCD。
日本盤であるはずなのだが、解説書を含めジャケットがないのは、全集から抜き出しているからかも知れない。まあ普段は安い輸入盤で解説など読まないからいいのだけど。ライナー・ノーツのは、ときになかなか興味深い文章があったりするので、あなどれないものではあるのだが。
この曲の真ん中の2つの楽章を気に入っていて、このふたつの楽章の演奏内容が、繰り返し聴くかどうかの指標になる。
内田はこれらの部分をあまりテンポを変えないで、実に中庸に弾いている。遅くもなく速くもない。
音色は特に美音ではないが、適度に柔らかくて自然に耳に入り込む。シューベルト特有の控えめでくずおれそうな繊細なメロディーを持つ第2楽章では、こういう気をてらわない弾きかたがいい。この部分、酒のつまみには今のところカーゾンの演奏が最高であるが、内田のものもいい肴になる。
終楽章になって、とつぜん内田のピアノが変化を見せる。テンポのゆれ、強弱のつけかたが激しくなり、音楽が忙しくなった。ここでようやく腕を見せられるといわんばかりである。この終楽章は前までの楽章に比べるとあまり華がないというか変化に乏しいところがあるので、これはちょうどよいスパイスのような気もしないではない。でも全体的には、やはり中間の2つの楽章においての抑えた表現がとても感じのよいものだった。
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