シューベルト 交響曲第9番「グレイト」 レーグナー指揮ベルリン放送交響楽団太宰治の「富嶽百景」を読む。
自宅の便所から見える悲しい富士、峠の茶屋から見える風呂屋のペンキ絵のような恥ずかしい富士、月夜に見る青く透き通るように光る富士。
悲しいときも嬉しいときも富士山はいる。
冬の晴れた日には、通勤電車から富士が見える。柳瀬川の駅のちょっと手前、川上の向こう側に白く聳え立つ。それは埼玉からとは思えないほど大きい。見ておかないとなにか損をしたような気分になるので、冬の晴れた日には、電車の右側のつり革に陣取るのだ。
レーグナーの「グレイト」はLP発売当初、2枚組なのが話題になった。1楽章で片面を使うのですごく贅沢な気がしたものだ。
CDになって、そういった豪華さはなくなったけど、演奏の価値は変わらない。
雄弁にしてなめらかなシューベルトだ。
レーグナーの実演に一度接したことがある。読売日響とのベートーヴェン「第九」。
確か中学の頃だった。
停留所でバスを待っていると、どこかのオジサンが話しかけてきた。
「どこに行くの?」。「厚生年金会館へコンサートです」。「なにやるの?」。「ベートーヴェンのダイクです」。「ほお、カラヤンかい?」。「いや、レーグナーっていう指揮者なんですけど」。
レーグナーって言ってもたぶんわからないだろうなあ、おじさんをがっかりさせちゃうかなあなどと子供心に気を使いながら答えたものだ。
コンサートそのものよりも、このバス停での会話をよく覚えている。
バス停でも登場するカラヤン。
1978年11月11~15日、東ベルリンでの録音。
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