ラサール弦楽四重奏団員の演奏で、シェーンベルクの「弦楽三重奏曲」を再び聴きました(1982年12月、ハンブルクでの録音)。
シュトゥッケンシュミットは十二音音楽について、こう語っています。
「十二音の音楽は、すべての半音を平等にあつかう無調の音楽だけでなく、調性の音楽をも包む。つまり十六世紀半ば以来の調性的な音楽は、無調の音楽のひろい世界の一部でしかないことを実証したにすぎない」。
音楽の幅が広がったという意味ではまさにその通りだと思いますが、無調だけの音楽は、依然として聴きづらいことを白状しなければなりません。「ワルシャワの生き残り」のような、テクストのある音楽は聴きやすいのですが。
この三重奏曲は、シェーンベルクが心臓発作で一度息を止め、その後復活したあとに完成された作品です。いわば、死後の世界を見た末の音楽。
3つの楽章と、2つのエピソードから成ります。とても峻厳な音楽。息を止める暇がないくらいに、密度が濃い。苛烈。せかせかしてもいる。のんびりしていない。ただ、ところによってはとても伸びやかで劇的でもある。肩の力を抜いて身を任せてみれば、スケールの大きさを感じないではいられません。
ラサールの演奏は、極めて精巧。
ラサール弦楽四重奏団員
ウォルター・レヴィン(Vn)
ピーター・カムニッツァー(Va)
リー・ファイザー(Vc)
パースのビッグムーン。
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