シェーンベルク:室内楽作品集西村賢太の「苦役列車」を読む。
これは日雇いの港湾荷役で生計をたてる19歳の少年の話。
日々の給料はすべて酒と風俗に使ってしまい、文字通りその日限りの生活を送っている。家賃を滞納しては、引っ越しを重ねる日々。
そんな彼の前に友達と言えるような男が現れた。彼を飲酒に風俗に連れまわす。合コンをしたいがために彼の女と食事を共にすることに成功するが、結局大学生の彼女を罵倒し、彼との関係も破綻する。
これは著者の私生活を生々しく描写した私小説ということだ。若者のやるせなさとあきらめがじわじ
わと感じられるが、読むのにつらくはない。厳しい生活をあっけらかんと描いているからだ。
アサートンの指揮でシェーンベルク「浄夜」を聴く。
これはオリジナルの弦楽六重奏版。この編成で指揮者がいるのかどうか。私にはわからないが、ライナーにはそう謳っている。
オリジナル版でこの曲を聴くのは、ラサール四重奏団その他の演奏以来であるが、このロンドン・シンフォニエッタの演奏もいい。
ひとつひとつの楽器、そしてフレーズが明瞭に聴こえる。そして情感が濃い。だから、さわやかな聴き心地でありながら、濃厚なロマンティシズムも味わうことができる。
ラサールの演奏は、明瞭さは同じであっても、もっと冷静でひんやりとする手触りがあるものだった。それに対し、アサートンのは熱い血潮の脈をリアルに感じることのできる演奏だ。
このような演奏を聴くと、「浄夜」はオリジナルで聴くのほうが面白いかと思う。
1973年10-12月、オール・セインツ教会での録音。
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