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"悪霊3"、ギレリス、"抒情小品集"

2012.08.01 - グリーグ

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グリーグ「抒情小曲集」 エミール・ギレリス(Pf)



ドストエフスキー(亀山郁夫訳)の「悪霊3」を読む。

「悪霊」を読み終えた。結局1年以上かかってしもうた。
この第3部は、それまでの2冊で展開された人間関係をすべて清算することになるわけだが、なぞは残る。
スタヴローギンは結局なにをやりたかったのか。ピョートルはただの殺人者なのか。5人組の崩壊は社会主義革命の失敗を示唆している一方で、ステパンの死は体制の終わりを告げるものと解釈できるのか。
私には難しい。翻訳者は、巻末に丁寧な解説をつけてくれているけれども、それを読んでも全てを納得できたとは言えなかった。
ただ、この3巻は一気呵成の圧倒的な筆力(翻訳力?)があって、ぐいぐいと引き込まれた。時間を忘れて読みふけった個所も少なくない。
もっとも、主要人物がこんなに多く死ぬ文学作品は珍しいのじゃないかな。

なかでも印象的だったのは、シャートフとその妻マリーの最後の部分。シャートフが妻を許して子どもを産むことに同意するシーンは感動的である。ここでのシャートフの行為は無償の愛とでも言えるもので、はるか昔に読んだ「白痴」におけるムイシュキン公爵を思い起こさせるのだった。








ギレリスのグリーグを聴く。

かねてから評判のCDであったものの、機会がなかった。それを取り戻すかのように、この1ヶ月はほぼ毎日これを聴いていた。抒情小品集をこんなにまとめて聴くことはもうないかもしれない。
珠玉の作品をギレリスが慈しむように弾いている。曲の雰囲気は、乱暴に言ってしまうと、湿度の低いシューマン。ひんやりとしたロマンをなみなみと湛えている。この時期だけに、一服の清涼感がある。

このCDには20曲が収録されている。「アリエッタ」の淡い抒情、「蝶々」の夢のような飛翔、「メロディー」のせつなさ、「音楽帳」の濃い夜の匂い、「夜想曲」の凍った湖のような肌触り、「余韻」の何もかもふっきれたような清々しさなど、好きなところをあげていけば全曲出てしまう。
これは、ずっと手元に置いておきたい1枚。



1974年6月、ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。





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Comment

叙情小曲集というと - yoshimi

こんにちは。
この叙情小曲集をギレリスとリヒテルが録音しているというのは、面白いですね。
ロシア人ピアニストに、特に人気のある作曲家でも曲集でもないと思うのですが...。
この2人が録音したので、とても有名になった曲集なのかもしれません。

どちらかというと、ギレリスの方がやや音色が暗めで静かな落ち着きがあり、内省的な雰囲気がします。
ギレリスは若い頃は、シューベルトでも重戦車のようにバリバリと弾いていたそうですが(村上春樹が言ってました)、年とともにピアニズムも変わっていったのでしょうね。

ギレリスの録音では、ベートーヴェンとブラームスのCDをいろいろ持っています。(あまり相性は良くありませんが)
特に忘れがたいのは、1985年に録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番。ギレリスが最後(かそのあたり)に録音した曲ではないかと思います。
祈りを込めたような演奏でこれは凄いです。他のどのピアニストもこういう風には弾けないでしょう。
2012.08.02 Thu 17:51 URL [ Edit ]

これは柔らかいギレリスですね - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。
前から気になっていたギレリスが弾くグリーグ。骨太なのだけど繊細。いかついオヤジが丁寧にさばく料理、そんな印象を持ちました。
そういえばリヒテルも録音していますね。あえてこのふたりが録音しているところが面白いですね。

そうそう、ギレリスの若い頃のシューベルト17は強烈だと書かれていました。あの曲をバリバリとは、イメージがわかないんです。
ギレリスのベートーヴェンは29がいまひとつピンとこなかったので、それ以降後期を聴いてきませんでした。31を聴かなきゃ。
2012.08.02 18:12

スタブローギンの慟哭 - neoros2019

物質的には全てに満たされた、坊ちゃん育ちの不世出の美貌の青年がより自己の美意識の頂点と下世話な性的快楽との差異の中に拘泥しついに激動の時代背景の渦中に破滅する物語と言っても良いでしょうか?
すなわち時代をスライドして現代人の普遍化された解かれることのない苦悩の一つ表していると解読してみたりしています
2012.08.02 Thu 23:59 [ Edit ]

シャートフの無念 - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、こんにちは。
何不足なく育った人間がむかう、破滅へのどうしようもない衝動というわけですね?
neoros2019さんの解釈ですと、イデオロギーはさほど関係がなく(全然ないわけではないにせよ)、人間の哀しさを描いているというように理解できます。この小説にとって、社会主義の波は大きなテーマのひとつだと思いますが、スタヴローギンやシャートフの振る舞いをみると、仰る通り、生きることそのものの困難を示しているように読めますね。
2012.08.04 11:49
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