バレンボイム指揮シカゴ交響楽団/R・コルサコフ「シェエラザード」浅田次郎に「シェエラザード」という小説がある。これは、第2次大戦の末期に日本が威信をかけて作った客船が、ある使命をうけてアジアの海を航海する話である。
この中で、豪華な船の中の遊戯室でリムスキー・コルサコフのシェエラザードが流されるシーンが何度かある。読んでいるときから、誰の演奏だか気になるのである。
本には明記されていないが、時代を鑑みると、SP盤が鳴らされていたということになるだろう。
舞台は1945年、それまでに発売されていたSPとなると指揮者は限られてくる。
モントゥーか、ストコフスキーか。クーセヴィツキーやアンセルメもありそうだ。
なにしろSPだから、コルサコフの作った大オーケストラの絢爛豪華さを望むのは酷かもしれないが、ヴァイオリンで鳴らされる異国情緒あるメロディーは、南シナ海を航海する客船にピッタリだったろうと夢想する。
バレンボイムはとてもゆったりとしたテンポを基調にしている。アラビアの雰囲気もロシアの大地という風情はなく、淡々としている。遅いけれども、淡々とした味わい。
シカゴ饗のうまさはいまさら言うまでもないけれども、ヴァイオリンのメイガッドを始めとしてどの楽器も余裕をもって演奏されている。実は難しい箇所もあるのだろうが、聴き手はまったくそういうことを感じないところが罪つくりだ。
テンポが遅いことで重量感はあるが、全体的にあっさりと調理されていて、聴いた後に不思議なくらい何も残らない。残らなさ加減が、小気味いい。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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