東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏会へ行った。
演目はオール・チャイコフスキー。
交響曲 第2番 ハ短調 作品17 「小ロシア」
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
渡辺玲子(ヴァイオリン)
祝典序曲「1812年」 作品49(合唱つき)
東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮:藤丸崇浩)
体調が良くないので夜の外出はなるべく控えているが、かねてからこのコンサートには行きたかった。
ところが、事務局に電話をしたら完売とのこと。
キャンセル待ちが出ればチケットを入手できると言われた。どういった状況でキャンセルのチケットが入手できるのかよくわからないと思いつつ、1番に並んだ。会場窓口のお姉さんも、いつキャンセルが発生するかわからないと言う。
不安であったが、数分もするとおもむろに余りのチケットを持った人が現れて、譲ってもらえることになった。ラッキーである。
キャンセル待ちとは、個人間の取引のことも指すようだ。
さて、コンサートは予想通り、とても楽しかった。
「2番」は冒頭のホルンが安定を欠いていたものの、以降は堅実な吹きぶりだったし、トロンボーン、トランペットは終始ピカピカに輝かしかった。
飯守は、オーソドックスなテンポを基調としながら、ときおり柔軟に強弱を変化させていた。極寒の北国のものというよりは、ほっこりと温かいものを感じた。
時間にすれば35分程度だったと思うが、あっという間に過ぎ去った。
「ヴァイオリン協奏曲」もよかった。渡辺のヴァイオリンは手厚いもので、音がスラリと綺麗に伸びていた。ことにカデンツァは、技巧的にも鮮やかだし、音は適度に大きいし、聴きごたえがあった。
この演奏も、いわゆる「ロシア臭」というものをあまり感じなかった。西欧風の味付け。
バックのサポートは盤石。
アンコールはシューベルトの「魔王」。
パガニーニが編曲したものかと思っていたが、今ネットで調べたら、エルンストという人が編曲したものであるらしい。
渡辺は、ピアノの神経質な打鍵と悲壮な歌とを、1丁のヴァイオリンで軽々と弾いてのけていた。参った。
最後は「1812年」。
合唱つきの演奏はマゼール盤で知っていたが、実際に生で聴いてみると、音としてもパフォーマンスとしてもやはり効果的。
期待の大砲は、できれば自衛隊のFH70野砲クラスをぶっ放して欲しかったが、そりゃ無理だよな。
ここでは、録音を使っていたようだ。音色はじつにマイルドで、大太鼓よりむしろ控えめといってもいいくらい。オーケストラの一部として違和感のない音であった。
全体を通して聴くと、この音楽が表題を抜きにしても、メロディーの多彩さと構成の堅牢さにおいて、一級品であることを改めて感じた。
スペクタクルを期待していた自分が、ちょっと恥ずかしいな。
いい演奏会だった。行ってよかった。
2012年3月16日、東京オペラシティ・コンサートホール。
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