クリストフ・プレガルディエンの来日公演に足を運びました(2022年10月3日、トッパン・ホールにて)。
シューベルト「水車屋の美しい娘」
ミヒャエル・ゲース(ピアノ)
シューベルトのこの連作歌曲集が大好き。一時期はずいぶんCDを集めていました。もちろんプレガルディエンの演奏も含んでいます。20世紀にシュタイアーと録音したもので、山の景色を彩る清流のような歌唱が際立っていました。
その彼も今は66歳とのこと。さて、どんな歌を聴かせてくれたか。
声にいささか渋みを加えたものの、美声であることは今も同じ。出だしの、夢いっぱいのさすらいの旅は、さぞ楽しかろうと思っていました。
ところどころ、テンポを大きく変えたり、装飾音を多用したり、あるいは音程を変えてみたり。それは特定の曲に限らず、全曲に渡っていました。
水車小屋のこんな演奏を聴くのはライヴを含めても初めて。ピアノも同様で、お互い自由気ままな雰囲気に満ちていました。
テノールが途中で歌詞を忘れてもいい。ピアニストが一緒に歌ってもいい。でも、泣きどころの「涙の雨」、「小川の子守歌」ですら、なんの感慨も湧かなかった!
終演後、満員の客席は沸いていたけど、アンコール1曲だけ聴いてそそくさと帰宅。
この曲には深い思い入れがあるだけに、ハードルを高く上げてしまっているのです。それも善し悪し、か。
後半は少しよかった。曲線を描くように破滅に向かうところは自然な勢いがありました。
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