村上春樹の「恋するザムザ」を読む。
これは、人間の姿に戻ったザムザが、せむし女に恋をする話。
私はカフカの「変身」を、人間性の喪失の物語と解釈しているが、この小説はザムザが人間性を回復する物語と読むことができる。
男の生命力の象徴(どっかのコマーシャルみたい)である「勃起」を通じて、ザムザはぬくもりのある人生に目を開いてゆく。
アンスネスの弾き振りで、モーツァルトのピアノ協奏曲17番を聴く。
オーケストラの序奏にピアノをからめるところは、グルダのスタイルを思いおこさせる。この序奏からオーケストラが素晴らしい。小編成と思われ、速めのテンポですっきりと切れ味がいい。細かなニュアンスが洒落ていて気がきいている。
やがてピアノソロが入ると、ここでもハッとさせられる。艶のある丸い音は粒立ちがよく、しかも流れがよい。自然で明るく、音楽を演奏する喜びに満ちている。聴く方ももちろん。こんなに楽しい演奏もそうそうない。
それにしてもファゴットのオブリガードのセンスのいいこと!
2楽章においても、ピアノ、オケともども冴えわたる。フルートとファゴットとピアノの掛け合いは幻想的。透明感のあるピアノの響きは存在感がある。
終楽章は快速で駆け抜ける。スピード感が気持ちいい。速いだけではなく、各パートはそれぞれよく鳴っているし、ピアノは陰影をつけているから、とても多層的だ。
モーツァルトのアレグロ(正確にはこの楽章はアレグレットの記載であるが)の愉悦を心ゆくまで堪能できる。
それにしてもアンスネスの指揮は、余技を超えている。やがて指揮者に転向、なんてことにならなければよいのだが。
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ、指揮)
ノルウェー室内管弦楽団
2007年3月、オシオ、ジャー教会での録音。
またまたスワン河。
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